研究課題
若手研究(B)
アブシシン酸(ABA)は植物の環境応答の要となる植物ホルモンであり、そののシグナル伝達系ではSnRK2プロテインキナーゼが中心的な役割を果たしている。SnRK2によるシグナル伝達をさらに解析するために、リン酸化プロテオーム解析によるSnRK2の基質探索を行ったところ、複数の基質候補を得ることに成功した。SnRK2-substrate 1(SNS1)は、それらの候補の一つであり、植物体中でSnRK2プロテインキナーゼによってリン酸化されるタンパク質として同定された。その後の逆遺伝学的な解析によって、SNS1はABAシグナルを負に制御することがわかっている。本研究課題では、SNS1が関与するABAシグナル伝達機構を明らかにすることを目的として、SNS1の機能解析を進めた。まず、SNS1欠損変異体(sns1-1)の表現型を詳細に調べたところ、SNS1は発芽時だけではなく、植物体においてもABAシグナル伝達に関わっていることが明らかとなった。たとえば、sns1-1では有意な乾燥ストレス耐性の増加が見られたり、開花期が遅延する現象が認められた。一方、SNS1の分子機能の解析については、相互作用タンパク質の解析を軸に準備を進めているところであり、酵母ツーハイブリッド法や共免疫沈降法などを用いてSNS1と相互作用するタンパク質を同定する予定である。
2: おおむね順調に進展している
SNS1の遺伝子破壊株の表現型を調査し、野生型に比べて乾燥耐性が増加していることや、開花が遅れる等の表現型を新たに見出した。したがって、SNS1は植物体の様々な組織でABAシグナル伝達因子として機能していることが示された。また、SNS1の相互作用因子をスクリーニングするため、酵母ツーハイブリッド法や共免疫沈降法を行うためのDNAコンストラクトや形質転換植物を作成した。以上のことから、研究はおおむね順調に推移していると判断する。
今後は、準備を進めている酵母ツーハイブリッド法や共免疫沈降法によってSNS1の相互作用因子の同定を進める予定である。相互作用因子の同定によって、SNS1によるシグナル伝達の実態が明らかになるとともに、SNS1のリン酸化の有無によるシグナル伝達の変化等も解析可能になることが期待される。
SNS1の相互作用因子をスクリーニングするための実験材料の準備に時間を要したため、当該年度中の実験が困難となったため、次年度に実験を繰り越した。そのため、表記の次年度使用額が発生した。当初計画通りに、SNS1の相互作用因子スクリーニング実験に使用する予定である。
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Science Signaling
巻: 6 ページ: rs8
10.1126/scisignal.2003509