研究課題/領域番号 |
25840104
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 照悟 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60632586)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光周性 / 花成 / 概日時計 / 組織特異性 |
研究実績の概要 |
高等植物のモデル植物であるシロイヌナズナにおいて、光周性花成経路で中心的に働く2つの遺伝子COとFTは、その遺伝子発現が概日時計によって制御されていることが解ってきている。高等植物において、概日時計機構は、すべての細胞で細胞自律的に機能しており、それぞれの細胞がその分子機構を保持していると考えられているが、CO、FT遺伝子が発現するのは主に葉の維管束組織にある師部柔細胞である。 本年度は25年度から作成した植物の各組織から核を生成するための形質転換植物体を用いて、組織特異的な核から由来するRNAのトランスクリプトーム解析を行った。研究費の問題も有り、申請時に計画していた3時間毎の詳細なタイムコース解析は出来なかったが、日の出から4時間後(ZT4)の朝のサンプルと、日の入り直前(ZT16)のサンプルを用いて解析を行い、師部柔組織、COの発現している組織、FTの発現している組織において特異的に発現している遺伝子群のリストを得た。これらの解析から、遺伝子発現活性の低いFTプロモーターを用いた植物体のデータは大きなノイズを含むことが明らかとなり、精度を高めた解析が必要であることが問題となったが、これらの組織で非常に強く発現しており、着目したCOやFT遺伝子との発現パターンの相関の高い遺伝子の絞り込みを行うことが出来た。次年度は、新たに作出しなおした形質転換体を含めてさらに精度の高いデータを得るべく、RNA抽出方法の改良を試みる。また、シロイヌナズナだけでなく、ウキクサの形質転換も試み、時計機構と光周性花成機構の分子メカニズムの解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
25年度から研究課題の解析に必須な形質転換植物を作成してきたが、所属研究機関の変更に伴って、植物の生育条件が変化してしまったため、一部の形質転換植物が死滅してしまった。これらの形質転換植物を再度26年度の途中から再び作製を進め、解析に遅れを生じたため研究期間の延長申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
組織特異的なプロモーターを用いてINTACT法により精製した核から抽出したRNAが部分的に分解してしまう問題は、抽出時間の短縮化によって、ある程度克服することが可能となった。しかしながら相対的に活性の低いプロモーターを用いた場合は、初発のサンプル量を増やしても、比較的多くの非特異的細胞からの核の夾雑が問題となることがわかった。磁気ビーズによる、精製、洗浄のプロセスの一層の迅速化と効率化を図って、この問題を解決し有意なデータを得たい。また植物体はシロイヌナズナだけでなく単子葉類、サトイモ科のウキクサも解析対象に加えウキクサ植物における概日時計機構と光周性花成機構のメカニズムの解明にも挑む。
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次年度使用額が生じた理由 |
25年度から研究課題の解析に必須な形質転換植物を作成してきたが、所属研究機関の変更に伴って、植物の生育条件が変化してしまったため、一部の形質転換植物が死滅してしまった。これらの形質転換植物を再度26年度の途中から再び作製を進め、時計遺伝子・花成遺伝子の発現解析が遅れてしまい、未使用額が生じた。論文投稿のための費用も未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
作製の遅れた形質転換植物を用いた遺伝子発現解析を次年度に行い、それらの研亜を含めて論文を投稿する予定である。未使用額はこれらの経費にあてる予定である。
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