研究課題/領域番号 |
25840105
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
井上 晋一郎 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40532693)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 気孔 / 青色光 / フォトトロピン / 細胞膜プロトンポンプ / プロテインキナーゼ |
研究概要 |
植物特有の青色光受容体フォトトロピンは、光屈性、葉緑体運動、気孔開口等の青色光応答を仲介する。本研究では、フォトトロピンと試験管内で相互作用するプロテインキナーゼを網羅的に探索し、特に、気孔開口に関わる新しいフォトトロピンのシグナル伝達パートナーを明らかにすることを目的としている。本年度の研究により、全く異なるファミリーに属する三つのプロテインキナーゼ(A, B, C)がフォトトロピンと相互作用することが明らかとなり、遺伝子破壊株や阻害剤を利用し、青色光応答の表現型解析を進めている。このうち、Aの変異株やBの阻害剤を処理した植物では、青色光に応答した気孔開口が損なわれており、Cの変異株では青色光を照射しなくても気孔が開口することが明らかとなった。このことから、フォトトロピンがAとBを介して気孔を開口させ、Cを介してあまり開口しすぎないように調節している可能性が考えられた。 これらの中でも、Aに関して特に詳細な解析を進め、Aが植物細胞内でもフォトトロピンと相互作用することが示された。また、フォトトロピンは気孔孔辺細胞において細胞膜H+-ATPaseを活性化して気孔を開口させるが、Aはフォトトロピンから細胞膜H+-ATPaseの活性化を引き起こすシグナル伝達には関係しておらず、全く新しい経路で働き、気孔開口を仲介することが明らかとなった。 また、Bは遺伝子ファミリーを形成して重複して働くため、遺伝学的解析はあまり進んでいないが、Bの特異的阻害剤を利用することにより、Bが細胞膜H+-ATPaseを直接リン酸化して活性化し、気孔開口を正に調節するプロテインキナーゼである可能性が示唆された。以上のように、本研究の成果により、フォトトロピンによって仲介される気孔開口のシグナル伝達メカニズムが着実に解明されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青色光受容体フォトトロピンと物理的に相互作用するプロテインキナーゼを3種得ることができ、それらがフォトトロピンが仲介する気孔開口に関与する結果を得ているため、実験計画に従っておおむね順調に進行していると考えられる。Bに関しては、遺伝学的な結果は得られていないが、それを補う説得力のある生化学的なデータが得られているため、現段階では十分な進捗状況だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Aに関してどのように気孔開口を仲介するのか、これまでに明らかになっているシグナル伝達因子との関係性を遺伝学や物理的相互作用解析等で明らかにする。Bに関しては、細胞膜H+-ATPaseを直接リン酸化するのか、生化学的に明らかにする。Cに関しても、遺伝学を用いて気孔開口の負の制御因子であることを証明し、さらに、この変異株の孔辺細胞におけるフォトトロピンシグナル伝達がどのように変化しているのか調べ、このキナーゼが働くシグナル伝達上の位置を決定する。
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