研究課題/領域番号 |
25840107
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西村 泰介 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 客員准教授 (10378581)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / 細胞リプログラミング / DNAメチル化 |
研究概要 |
動物と同様に植物においてもDNAメチル化が脱分化・再生の過程に関与する事が知られているが、DNAメチル化がどのような遺伝子に作用しているのかは明らかでない。本研究課題では、脱分化・再生過程に異常の見られるエピ変異体を、DNA配列は野生型とほぼ同じであるが、ゲノム上の領域によってDNAメチル化のパターンがそれぞれ異なる、エピジェネティック組換え自殖系統(epiRILs)から単離し、その原因遺伝子を同定する事で、DNAメチル化の作用機構を明らかにすることを目指している。 本年度は、epiRILs系統から切り出した根や胚軸に対して、植物ホルモンであるオーキシンとサイトカイニンを与える事で、カルス化とシュート再生試験を行った。その結果、少なくともシュート再生効率が低下する2系統と、上昇する1系統を得る事に成功した。中でもシュート再生効率が上昇する系統では、カルス化を誘導した際に、緑化が進むという表現型も観察された。これらの系統の次世代を観察したところ、シュート再生効率への影響は比較的安定に遺伝し、特にシュート再生効率が上昇する系統では、次の世代のほとんど全ての植物で、表現型が観察された。この最も安定なシュート再生効率が上昇する系統に対して戻し交配を行い、連鎖解析を試みたところ、原因遺伝子は1遺伝子座で、4番染色体上に座乗する可能性が示唆された。 また本年度は、これらの系統のDNAメチル化の状態がより安定化する事を期待して、新規DNAメチル化酵素の変異体との二重変異体を作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、比較的安定に次世代に遺伝する表現型を示すエピ変異体の候補を、3系統、得る事に成功した。また少なくとも1系統は遺伝解析がある程度は可能である事を示す結果が得られている。この点は、計画通りで大きな問題もなく進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究実施計画通り、得られた系統に対するトランスクリプトーム・DNAメチローム解析を行うことで、どのような遺伝子群の発現およびDNAメチル化が変化しているかを明らかにする予定である。また本年度に引き続き、遺伝学的な連鎖解析を行い、原因遺伝子の遺伝様式やコピー数、座乗染色体などの詳細を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた約70系統に対するカルス化とシュート再生試験が全て完了する前に、比較的安定に次世代に遺伝するエピ変異体の候補を複数系統、得られる事ができた。そのために途中で大規模なスクリーニングを終了し、3つの候補に絞った解析を行ったため、経費を抑える事が出来た。また経費の必要とする分子レベルでの解析は次年度に集中して行い、まず本年度はこれらの系統の遺伝解析を集中して行う事が効率的であると判断し、次年度に繰り越した。 本年度使用しなかった経費を次年度における遺伝子の同定など、分子レベルでの解析に使用する。複数の系統に対して研究を行うため、当初計画より経費が必要であると予想される。
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