研究課題
前年度に引き続き、特定の遺伝子領域におけるエピ変異体(DNAメチル化のパターンが変化している変異体)のシロイヌナズナ系統集団であるエピジェネティック組換え自殖系統群から、脱分化・再生過程に異常の見られる系統の選抜を行い、最終的に、シュート(地上部器官)の再生効率の高い系統を2系統,低い系統を2系統それぞれ得ることに成功した。ほとんどの系統でこれらの表現型形質は次世代でも観察されたが、今年度は、表現型形質が安定して次世代に遺伝する、A471と名付けた系統に特に着目して遺伝解析を進めた。A471系統ではシュート再生効率が野生型より高いことに加えて、脱分化誘導条件において、野生型では決して緑化しない条件で、緑化を示した。つまり脱分化誘導条件において、A471系統は脱分化状態を維持できずに、シュートへの再分化が始まってしまうと考えられた。戻し交配して遺伝解析を行った結果、(1)雑種第一世代で表現型を示したことから、これらの表現型は優性形質であること、(2)雑種第二世代の観察結果から高いシュート再生効率と脱分化誘導条件における緑化は連鎖しており、同一の遺伝子座の影響に依る可能性が高いこと、(3)雑種第二世代の表現型の分離比から、少なくとも2遺伝子座以上がこれらの表現型が関わる事、が予想された。また連鎖解析によって原因遺伝子を同定するために、遺伝背景の異なる野生型系統に戻し交配し、雑種第二世代における表現型を観察した。その結果、同様の表現型が観察されたことから、A471系統は連鎖解析によって原因遺伝子座が同定できる可能性が示された。今後はA471系統の連鎖解析を進め、次世代シーケンサーによるゲノム上の多型マーカーの解析とトランスクリプトーム解析と組み合わせることにより、原因遺伝子の同定を行う。
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