研究課題
若手研究(B)
植物のミトコンドリアは粒状であり、その形態を維持することは胚発生や花粉管伸張など植物の発生・生殖過程を正常に進める上で極めて重要である。この維持にはMiro とよばれる、ほぼ全ての真核生物に存在するミトコンドリア局在型GTPase によるミトコンドリアの形態制御が必要であるが、その具体的なメカニズムはこれまで全く不明であった。本研究では、シロイヌナズナMiroオーソログであるMIRO1に注目し、MIRO1がどのようなメカニズムによって植物ミトコンドリアの形態を維持・制御しているかを明らかにする。本年度の成果は以下の通りである。1)MIRO1ノックダウン植物の作成:MIRO1の遺伝子欠失(ノックアウト)は胚性致死であり、細胞生物学に基づく詳細な解析が困難である。MIRO1が植物ミトコンドリアの形態維持にどのような役割をもつかを明らかにするために、人工マイクロRNAによるMIRO1の遺伝子発現抑制(ノックダウン)を試みた。得られた形質転換植物ではMIRO1の転写産物およびタンパク質のいずれも顕著な蓄積の低下を示した。また色変換可能な蛍光タンパク質Kaedeによりミトコンドリアを可視化したところ、その形態に異常が見られた。2)MIRO1結合タンパク質の探索:MIRO1がどのような作用機序により植物ミトコンドリアの形態を維持しているかを明らかにするために、MIRO1と相互作用するタンパク質の探索を試みた。MIRO1細胞質ドメインをbaitとしてシロイヌナズナcDNAライブラリーに対しyeast two-hybrid法によるスクリーニングを行ったところ、複数の候補タンパク質を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度はMIRO1ノックダウン植物のライン確立に成功し、今後の解析の基礎を得ることができた。また当初の計画よりも早くMIRO1結合タンパク質の候補を複数得ることができた。以上のことから、本年度は今後に向けて十分な実績を上げることができたと考えている。
1)MIRO1ノックダウン植物におけるミトコンドリア動態の解析:次年度は、MIRO1ノックダウン植物を共焦点顕微鏡および電子顕微鏡観察などを用いて観察し、MIRO1ノックダウンによるミトコンドリアの構造・形態への影響を明らかにする。また蛍光タンパク質Kaedeを用いて、MIRO1ノックダウンによるミトコンドリアの形態変化(分裂および融合)・運動など動態への影響について明らかにする。2)MIRO1結合タンパク質の同定と機能解析:次年度は、まず本年度のスクリーニングにより得られたMIRO1結合タンパク質の候補について、共免疫沈降法などによりその相互作用を検証する。同定できたタンパク質については、共焦点顕微鏡観察・細胞分画実験などにより細胞内局在を明らかにするとともに、ノックアウト・ノックダウン植物を得ることで、ミトコンドリアの形態維持における役割を明らかにする。
本年度は、予定していた国際学会への参加の必要が無くなり、また予定よりもより効率良く期待された研究成果が得られたため、旅費および物品費に次年度使用額が生じた。次年度は、当初の予定よりも多くの国内外の学会・研究会に参加し研究成果の公表を行うため、旅費として使用する。またこれまでに得られた変異株について、当初の予定よりもより詳細な電子顕微鏡観察などを行うため、物品費として使用することを予定している。
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Plant Cell
巻: 25(8) ページ: 2958-2969
10.1105/tpc.113.114082