研究課題/領域番号 |
25840111
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
篠原 秀文 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40547022)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物 / ペプチドホルモン / 受容体キナーゼ / 根端メリステム / 硫酸化ペプチド |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナの根端領域で発現しているRGFペプチドは,転写因子PLETHORAタンパク質の発現領域を調節することで根端メリステム活性を制御しているが,どのように情報伝達が行われているかは不明で,受容体の同定は必要不可欠である.申請者はRGFを介した根端メリステム領域の維持機構の解明のためにRGF受容体を同定することを目的とし,研究を進めている. 前年度までに,受容体発現ライブラリーを用いた網羅的結合実験の結果から,RGFペプチドを直接結合する受容体キナーゼを3つ見出した.この3つの受容体キナーゼはいずれもシロイヌナズナの根端で発現しており,RGF受容体として機能していることが強く示唆されていた.今年度はRGF受容体の三重変異体を作出し,表現型を観察した.三重変異体は根端分裂組織が縮小し,根が短くなる表現型を示した.また三重変異体は外的に投与したRGFペプチドに非感受性であった.三重変異体中ではPLETHORA(PLT)タンパク質のグラディエントが失われており,根端で発現するRGFペプチドが,3つのRGF受容体に直接認識されることでPLTタンパク質の分布パターンを調節し,根端分裂組織の維持を行っていることを明らかにした. 以上の結果を論文として報告した(Shinohara H et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 113 3897-3902 (2016)).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的であるペプチドシグナルRGFの受容体の同定を達成し,論文として報告した(Shinohara H et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 113 3897-3902 (2016))ため,目標は概ね達成されたと考えている.さらにRGF受容体を介した情報伝達系の下流因子の探索にも着手しており,受容体遺伝子破壊株を利用した化合物スクリーニングの系を新規に立ち上げている.現在までに下流情報伝達因子に作用している可能性のある化合物候補がいくつか得られており,今回の成果を通じてRGF受容体を介した根の幹細胞領域維持機構の解明に近づきつつあると考えられるため,当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
RGF受容体遺伝子破壊株を利用した化合物スクリーニングを継続して行い,RGF情報伝達系に影響を及ぼす化合物を同定する.また同定した化合物のターゲットの同定を行い,同定した遺伝子の破壊株の表現型,発現パターンの解析を通じて,RGF受容体を介した根の幹細胞領域維持機構の解明に迫る.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度,RGF受容体遺伝子破壊株を利用した化合物スクリーニングを開始し,現在までに下流情報伝達因子に作用している可能性のある化合物候補がいくつか得られている.この化合物スクリーニングを継続して行うことが,RGF情報伝達系の解明に重要であると考えられたため,化合物スクリーニングの継続のために必要な経費を次年度に繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
化合物スクリーニングに必要な消耗品類(化合物,アッセイ用プレート,分注用機器など)の購入費に充てる予定である
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