研究課題/領域番号 |
25840113
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
井川 智子 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (00360488)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重複受精 / 生殖 / 被子植物 / 花粉管 |
研究実績の概要 |
被子植物は、2個の精細胞(雄性配偶子)が卵細胞と中央細胞(共に雌性配偶子)とそれぞれ融合する「重複受精」を行う。受精はすなわち雌雄配偶子の相互作用であり、配偶子細胞膜上に存在する因子によって制御されると考えられる。現在までに配偶子膜局在型受精因子は雄性配偶子側で2つ発見されているが、雌性配偶子の膜局在型受精因子は見つかっていない。本研究では、植物卵細胞膜プロテオーム解析で同定された候補因子について逆遺伝学的および形態学的な機能評価を行い、重複受精制御機構の解明を目的として着手した。本研究で解析対象となったタンパク質をコードする遺伝子の遺伝子破壊株を入手し、種子稔性を調査した結果、稔性が低下した変異体を見出した。この変異体をasf (abnormal seed formation)と名付けた。asf変異体におけるT-DNA挿入位置を確認したところ、データベース上にアノテートされた遺伝子が破壊されたものではないことが判明した。しかし表現型を調査した結果、花粉管の伸長およびガイダンスに異常が認められ、新規の表現型であった。平成26年度は名古屋大学との共同研究として、asf変異体の全ゲノムシークエンスを行い、T-DNAが挿入されて破壊された遺伝子領域部分を同定した。その結果、2カ所にT-DNAが挿入されていることが判明した。そのうち一つは配列から、分泌系のタンパク質ファミリーに属する因子であった。なおかつ、同ファミリーには受精に関わる因子として報告されているものもあり、asfの表現型との関連性が興味深い。現在、各遺伝子についての破壊株を再度入手し、表現型調査を行った後、遺伝子機能調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では卵細胞膜に存在する重複受精因子を発見することを最終目的としている。今回、上記のような経緯から花粉管に関与する表現型を示す変異体の調査に研究内容がシフトしつつあるが、新規の表現型のため追究する意義がある。H26年度においてasf変異体における遺伝子破壊部位が同定できたため、今年度は機能解析を目的とする。
また、卵細胞膜プロテオームをさらに行うために、サンプリング及び卵細胞膜タンパク質精製条件の検討も行っている。以上の進行状況から、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
asf変異体について、原因遺伝子の確定および機能解析を行い、学術論文として完成させる。また、卵細胞膜精製およびプロテオーム解析も条件検討を行いつつ進める。
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