研究課題
被子植物の有性生殖は、まず花粉が柱頭に受粉することから始まる。受粉した花粉は花粉管を発芽し、雌ずいの中を伸長していく。花粉管はやがて胚珠に引き寄せられて胚のうに進入し、花粉管を破裂して2つの精細胞を放出する。2つの精細胞はそれぞれ胚のう内にある卵細胞または中央細胞と受精し(重複受精)、受精した卵細胞は胚に、中央細胞は胚乳に発達して次世代の種子が形成される。本研究では平成26年度までに種子が発達しないシロイヌナズナ変異体asf(abnormal seed formation)を見出し、この変異体では2遺伝子座が破壊されていることを解析していた。平成27年度ではこの2因子それぞれの遺伝子破壊株を入手してcas-1、cas-2と名付け、表現型を解析した。どちらの変異体も種子発達率の低下を示したが、その程度はasfの種子形成率に比べて高く、asfの表現型がcas-1とcas-2の二重破壊に起因することを示唆した。cas-1についてはこれまでに機能解析研究が報告されていたが、有性生殖現象との関連性については報告がなかった。そこで当該年度はcas-1のノックアウト変異体について、配偶体形成や受精における影響を解析した。さらにgenomic cas-1とGFPを融合した遺伝子カセットを導入して形質転換体を得、cas-1の配偶体組織における局在や発現パターンを解析している。現在これらの形態観察結果をまとめている。また、当該年度においては花粉管ガイダンスに関する研究も平行して行い、現在研究論文を作製中である。
3: やや遅れている
asf変異体で破壊されている遺伝子座を同定するまでに時間を要したため、研究開始3年目にしては当初の期待より遅れてしまったが、遺伝子座の同定以降は順調に進んでいる。さらに、関連研究として花粉管の動態解析について研究成果をまとめているところのなので、H28年度には学術論文を発表できる予定である。
cas-1の解析を引き続きおこない、cas-1と生殖現象との関連性を明らかにする。具体的には、雌雄配偶体の発生ステージ毎にCAS-1の組織および細胞内局在の観察を行う。さらにcas-1変異体の配偶体発生における表現型観察、重複受精における重複受精観察を行い、CAS-1の生殖プロセスにおける役割を明らかにする。花粉管の動態解析研究については試験数を追加してデータの再現性と信頼性を統計的に証明した上で投稿し、H28年度中に学術論文としてアクセプトされた状態とする。
本助成による研究成果を現在学術論文にまとめている。追加実験を求められた場合と、論文がアクセプトされた際の掲載料のため、延長申請を行い、承認されている。
研究成果を学術論文として発表するために必要とされる経費に充てる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Cell
巻: 161 ページ: 907-918
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