研究課題
若手研究(B)
申請者は、脊椎動物コレシストキニン/ガストリンの起源を突きとめる目的で、脊椎動物に近縁な原索動物カタユウレイボヤを用い研究を行っている。カタユウレイボヤにおいて、コレシストキニン/ガストリン様ペプチド、cionin とその受容体 cionin receptor (CioR1) が同定されている。本課題では CioR1の局在解析を中心として、cionin のホヤにおける生理的役割を研究する。ホヤはオタマジャクシ型の幼生から変態し、成体となり性成熟するというライフサイクルをもつ為、幼生と成体の両方の cionin の役割の検討が必要である。平成25年度は、幼生におけるCioR1発現局在を検討するために、CioR1 promoter 下で発現する蛍光蛋白kaede の局在解析を実施した結果、幼生の運動神経と尾部の神経索に蛍光が認められた。さらにCioR1 陽性細胞を同定するために、アセチルコリントランスポータートランスジェニック個体の受精卵に CioR1プロモーター kaede ベクターを導入し、幼生まで観察した結果、CioR1陽性細胞の大分部がコリン作動性神経であることを明らかにした。コリン作動性神経は幼生の遊泳運動に重要な役割を果たしており、これらのことは、cionin が CioR1を介してコリン作動性神経に作用し遊泳運動に関与していることを示唆する。またRT-PCR法で幼生の内在性発現を検討した結果、CioR1 mRNA の発現を認めた。そこで、in situ hybridization でCioR1のより詳細な局在を解析したが、mRNAの局在を検出することができなかった。今後は、より感度の高いin situ hybridization の実験条件を再検討し、CioR1局在を検出する予定である。加えて、成体におけるcionin の役割についても解析する予定である。
3: やや遅れている
幼生における CioR1 mRNAの局在解析が遅れている。RT-PCR法では CioR1 mRNAが検出できているが、その局在をin situ hybridization で検出できていない。CioR1 mRNAの発現量が微量であることが原因だと考えられる。今後は、実験条件を改善し検出感度を高めたうえで、局在検討を実施する。
今後は、幼生における内因性のCioR1 mRNAの局在を再検討する。さらに成体の cionin の役割を明らかにする目的で、成体組織における局在解析を行う。具体的には、既にcionin 陽性神経が入・出水管に投射していることを明らかにしているので、この神経の投射先におけるCioR1局在を検討する。RT-PCRで CioR1 mRNAの発現が確認されている消化管においても、CioR1陽性細胞の局在を検討する。これらの発現局在を手掛かりにして、入・出水管の収縮や消化酵素活性を測定する予定である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://rinkai.w3.kanazawa-u.ac.jp/