消化管ペプチドの機能進化の研究：ホヤの受容体トランスジェニック個体を用いた解析

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 25840114
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 関口 俊男 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (40378568)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2015-03-31
• キーワード: コレシストキニン / ガストリン / カタユウレイボヤ

研究実績の概要

本研究課題は、カタユウレイボヤにおけるコレシストキニン(CCK)/ガストリンペプチドの相同遺伝子であるcioninの機能解析により、CCK/ガストリンの始原的役割の一端を明らかにすることを目標としている。
ペプチドが作用を発揮するためには受容体が必要であるので、cionin の機能解析の一端として、cionin 受容体の上流配列のもとで蛍光タンパクを発現するトランスジェニック個体を作製した。本年度は成体における発現検討を実施したが、成体における発現パターンは内因性の発現と異なっていた。従って方針を改め他の方法による解析を試みた。
まずcionin とcionin 受容体の発現パターンを広く検討した。cionin 及び cionin 受容体の組織発現分布を real time PCRで解析した結果、cionin は中枢神経において、他の組織の300倍という高い発現量を示した。一方cionin 受容体の発現は、中枢神経の他に消化管にも認められた。このことから中枢神経で産生されたcionin が神経伝達物質として他の神経細胞に作用を示すと共に、消化管にも機能を持つことが示唆された。
そして、cionin の消化管における機能を解析するために、器官培養系の構築を試みた。カタユウレイボヤ消化管の還流培養系において、消化管内腔にデンプンを流したところ、アミラーゼ活性の上昇が認められたので、cionin によるアミラーゼ活性誘導を評価する系が確立できた。
さらに、cionin ペプチドの発現局在を検討した。中枢神経の連続切片を用いたcionin抗体による免疫組織化学の結果、cionin 陽性神経の細胞体が中枢神経前方部に局在していることをつきとめた。この神経の走行を詳細に解析するために、cionin 遺伝子上流配列の制御下で蛍光タンパクを発現する系の構築を試みた。しかしながらcionin 遺伝子上流の配列が未解読であったため、Tail PCR 法により未知配列を増幅した結果、約1.8 kbp のcionin 上流の塩基配列を決定することができた。

研究成果

• [雑誌論文] Effect of inorganic mercury and methylmercury on osteoclasts and osteoblasts in the scales of the marine teleost as a model system of bone. (2014)
  • 著者名/発表者名: (4)Yachiguchi, K., Sekiguchi, T., Nakano, M., Hattori, A., Yamamoto, M., Kitamura, K., Maeda, M., Tabuchi, Y., Kondo, T., Kamauchi, H., Nakabayashi, H., Srivastav, A.K., Hayakawa, K., Sakamoto, T. and Suzuki, N.
  • 雑誌名: Zool. Sci. 巻: 31 ページ: 330-337
  • DOI: doi: 10.2108/zs130265.
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Increased PGE2 has a positive correlation with plasma calcium during goldfish reproduction. (2014)
  • 著者名/発表者名: Suzuki, N., Maruyama, Y., Nakano, M., Hattori, A., Honda, M., Shimazaki, Y., Sekiguchi, T., Kamauchi, H., Mishima, H., Wada, S., Srivastav, A.K., Hayakawa, K. and Oshima, Y.
  • 雑誌名: J. Fac. Agr., Kyushu Univ. 巻: 59 ページ: 97-101
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Polychlorinated biphenyl (118) activates osteoclasts and induces bone resorption in goldfish. (2014)
  • 著者名/発表者名: (7)Yachiguchi, K., Matsumoto, N., Haga, Y., Suzuki, M., Matsumura, C., Tsurukawa, M., Okuno, T., Nakano, T., Kawabe, K., Kitamura, K., Toriba, A., Hayakawa, K., Chowdhury, V.S., Endo, M., Chiba, A., Sekiguchi, T., Nakano, M., Tabuchi, Y., Kondo, T., Wada, S., Mishima, H., Hattori, A. and Suzuki, N.
  • 雑誌名: Env. Sci. Poll. Res. 巻: 21 ページ: 6365-6372
  • DOI: doi: 10.1007/s11356-012-1347-5.
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [学会発表] カタユウレイボヤにおけるcioninおよび受容体の発現解析． (2014)
  • 著者名/発表者名: 谷口詩穂，小笠原道生，佐竹 炎，鈴木信雄，関口俊男
  • 学会等名: 平成26年度日本動物学会中部支部大会
  • 発表場所: のと勤労者プラザ、石川県
  • 年月日: 2014-11-23 – 2014-11-24
• [学会発表] カルシウム調節ホルモンの分子進化． (2014)
  • 著者名/発表者名: 関口俊男
  • 学会等名: 平成26年度日本動物学会中部支部大会
  • 発表場所: のと勤労者プラザ，石川県
  • 年月日: 2014-11-23 – 2014-11-24
  • 招待講演
• [学会発表] カタユウレイボヤを用いた内分泌系進化の研究． (2014)
  • 著者名/発表者名: 関口俊男
  • 学会等名: 日本動物学会第85回仙台大会 関連集会ホヤの談話会
  • 発表場所: 東北大学、宮城県
  • 年月日: 2014-09-11 – 2014-09-13
  • 招待講演
• [学会発表] 脊椎動物カルシトニンの起源と多様化の研究． (2014)
  • 著者名/発表者名: 関口俊男
  • 学会等名: 全国国立大学臨海臨湖実験所所長会議シンポジウム「海産動物の生体制御学的研究とその拡がり」
  • 発表場所: 岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所、岡山県
  • 年月日: 2014-06-05
  • 招待講演
• [図書] Gastrin family. in “Handbook on Hormones”. Y. Takei, H. Ando, and K.Tsutsui. Eds. (2015)
  • 著者名/発表者名: Sekiguchi T.
  • 総ページ数: in press
  • 出版者: ELSEVIER
• [図書] Gastrin. In “Handbook on Hormones”. Y. Takei, H. Ando, and K.Tsutsui. Eds. (2015)
  • 著者名/発表者名: Sekiguchi T.
  • 総ページ数: in press
  • 出版者: ELSEVIER
• [図書] Cholecystokinin. In “Handbook on Hormones”. Y. Takei, H. Ando, and K.Tsutsui. Eds. (2015)
  • 著者名/発表者名: Sekiguchi T.
  • 総ページ数: in press
  • 出版者: ELSEVIER
• [図書] Caerulein. In “Handbook on Hormones”. Y. Takei, H. Ando, and K.Tsutsui. Eds. (2015)
  • 著者名/発表者名: Sekiguchi T.
  • 総ページ数: in press
  • 出版者: ELSEVIER
• [備考] 金沢大学臨海実験施設
  • URL: http://rinkai.w3.kanazawa-u.ac.jp/