研究課題
若手研究(B)
恒温動物の体温維持には、視床下部―下垂体―甲状腺系による調節が重要な役割を果たしている。すなわち、体温低下を感知すると視床下部での甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の合成が高まり、TRHの刺激により下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)が放出され、TSHが熱代謝促進ホルモンである甲状腺ホルモンの分泌を刺激する。一方、変温脊椎動物の視床下部―下垂体―甲状腺系の調節には視床下部因子である TRH は殆ど関わってないことが示唆されている。本研究は変温動物である両生類をモデルとして変温動物から恒温動物 への移行が、両生類では内分泌学的にどこまで準備され、いかなる内分泌的要因が両生類をして 変温動物に留まらせているかを明らかにすることを目的とする。本年度は、哺乳類で見られる視床下部-下垂体―甲状腺系の低温による活性化が両生類においてもすでに備わっているのか否かを明らかにするため、まずウシガエルTRH前駆体をコードするcDNAのクローニングを行った。その結果、ウシガエルTRH前駆体は7カ所のプレプロTRHをコードしていること、他の脊椎動物のTRH前駆体と30-50%保存されていることがわかった。また、低温で飼育したウシガエルの視床下部におけるTRH前駆体 mRNA発現レベルを逆転写PCRで測定し、常温飼育群と比較すると、約2倍に上昇していることが明らかになった。一方、下等脊椎動物における強力なTSH放出因子である副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)のmRNA発現には、有意な差は認められなかった。同様の傾向は、ネッタイツメガエルにおいても観察された。このことから、両生類においても低温によりTRHの合成が高まる機構はすでに備わっているが、TRHが視床下部-下垂体―甲状腺系にほとんど関与していないことが、変温動物と恒温動物を分ける重要な要因の1つであることが示唆された。
3: やや遅れている
低温により視床下部中の含量が変化する因子の同定を目指した。哺乳類と同様にTRH前駆体の発現が低温により増加することを明らかにし、また、ウシガエルTRH前駆体の構造に関する情報も得られた。本年度の目的は達成できたと考えている。一方、視床下部からの内因性のTSH放出因子の同定を目指し、視床下部抽出物の分離および分離フラクションによる培養下垂体細胞からのTSH放出活性を解析しているが、因子の同定には至っていない。
低温により両生類視床下部におけるTRH前駆体mRNAの発現が高まることが明らかになった。引き続き、他の視床下部因子について温度による発現変動が見られるか否かを明らかにして行くとともに、下垂体におけるTSHの合成や分泌、甲状腺ホルモンの分泌に関する測定も行う。また、TRHの受容体およびTRHが合成や分泌に影響を及ぼすと考えられるTSH以外の下垂体ホルモンに関しても、低温による変化を解析し、その生物学的機能を明らかにする。一方、カエル脳よりTSH放出に影響を及ぼす因子の同定を進める。
内因性視床下部因子の同定に若干の遅れが生じ、分析カラムの購入を見送った。26年度に分析カラムを購入し、サンプルの最終精製を行う。
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