研究課題
恒温動物の体温維持には、視床下部ー下垂体ー甲状腺系による調節が重要な役割を果たしている。すなわち、体温低下を感知すると視床下部での甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の合成が高まり、TRHの刺激により下垂体からの甲状腺刺激ホルモン(TSH)が放出され、TSHが熱代謝促進作用を有する甲状腺ホルモンの分泌を促進する。一方、変温動物の視床下部ー下垂体ー甲状腺系にはTRHはほとんど関わっていないこと、TSHの促進ホルモンとして副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)が主として機能していることが明らかになっている。本研究は、変温動物から恒温動物への移行が、両生類においてどこまで準備され、いかなる内分泌的要因が両生類をして変温動物にとどまらせているのかを明らかにすることを目的とする。本年度は昨年度に引き続きTRH発現に及ぼす低温の影響を詳細に検討し、ウシガエル視床下部におけるTRH mRNAの発現はより短期間の低温刺激により増大することを明らかにした。また、低温によって下垂体におけるプロラクチン(PRL) mRNAレベルが上昇することを見出した。一方、哺乳類下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の放出促進因子であるCRFは、前述のように両生類の下垂体に対しては強力なTSH放出因子として働く。両生類ACTH細胞に対しては、CRFではなくアルギニンバソトシン(AVT)が高い放出活性を示すこと、またカエル脳に存在する機能未知のペプチドがACTHの抑制作用を示すことが明らかになった。さらに、低温順応時の生体内での生理的調節機構に着目し、ニホンアマガエルが極度の低温にさらされると、グリセロールの合成が高まること、その輸送にはアクアグリセロポリンであるAQP9が関与している可能性があることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に引き続き、低温により発現レベルが変動するウシガエルの視床下部因子を明らかにする研究を行った。また、アマガエルが極度の低温にさらされた際、グリセロールおよびグルコースが耐凍物質として働き、その調節にはアクアグリセロポリンであるAQP9が関与していることを明らかにできた。
低温によりカエル視床下部において発現レベルが変化する因子の解明を引き続き行う。また、TRH、CRF、AVTおよびその他の視床下部因子が下垂体ホルモンの放出に及ぼす影響を、ホルモンの発現、分泌、および受容体の発現という観点から明らかにしていく予定である。一方、低温(凍結)順応時にカエルの生体内ではグリセロールに加えグルコースの合成、蓄積が高まっているらしいことがわかってきている。耐凍物質としてのグルコースに着目し、グルコース合成系に関わる因子および輸送体の同定・発現・局在の解析を行っていく。
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Zool Sci
巻: 32 ページ: 296-306
Gen. Comp. Endocrinol
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.ygcen.2014.09.001.