研究課題
若手研究(B)
哺乳動物の精子を成熟させる精巣の細胞内構造物ヌアージュに種々のタンパク質が見出されている。Argonaute2(Ago2)タンパク質は、配偶子細胞の精原細胞で、標的mRNAのガイドとして働くsiRNAやmiRNAと結合して、異常なmRNAを切断し遺伝子の保護に役立つRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)の主要成分である。精子細胞の発生に伴いAgo2の局在変化を明らかにし、精子発生に伴う遺伝子の保護の関係を明確にするため、免疫電子顕微鏡的手法を用いる観察を行った。精子の発生と細胞構造物の形態が観察しやすいラットを用いた研究を行うため、抗ラットAgo2に由来する14アミノ酸残基のペプチドを抗原にウサギに免疫し、ポリクローナル抗体を作製した。同抗体は、ラット精巣から超遠心分離で得たミトコンドリアと細胞質分画に存在するAgo2(分子量約100 kDa)を検出することが確認出来た。本抗体とラット精巣組織切片、蛍光顕微鏡および透過型電子顕微鏡を用いてAgo2の局在を観察し、細胞内のヌアージュ構造に存在し、精母細胞および精子細胞への成熟する期間に、細胞内の特徴的な構造に局在が移行していくことをはじめて明らかにできた。
2: おおむね順調に進展している
ラット精巣のAgo2を特異的に検出できるポリクローナル抗体の作製に成功し、Ago2が雄性配偶子細胞のヌアージュ構造に存在して発生に伴い特異的な局在が認められ、結果を組織学および細胞生物学の学術雑誌に投稿した。計画は順調に進展している。
精巣の発生成熟に伴うAgo2タンパク質と他のヌアージュタンパク質との局在の異同を、免疫電子顕微鏡・蛍光光学顕微鏡を用いて観察する。遺伝子抑制タンパク質であるAgo2が機能を発揮するため、RISCと結合して細胞内に存在していることが報告されている。Ago2と特異的に結合する分子をアフィニティー精製法で単離し、プロテオームの手法を用いてこれら分子の特定を行う。同様にAgo2複合体と結合するRNAを単離し、その配列を同定する。
年度末に予定していた抗体作製のための抗原の準備が遅れ、次年度に抗体作製を依頼することになったため。精子形成に関わるAgo2を含むRISC複合体のタンパク質を抗体を用いて精製および検出のため、抗体作製の依頼やRISCタンパク質に対する抗体の購入を行う。同時に複合体タンパク質を精製後、プロテオーム解析を用いてタンパク質とAgo2複合体と結合するRNAの配列の同定の依頼も検討している。
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