研究課題/領域番号 |
25840124
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉 拓磨 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教(特任) (70571305)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 記憶 / エピジェネティクス / 線虫C. elegans |
研究概要 |
本研究は、線虫をモデル系に、記憶・学習を定量的に解析する系を構築し、記憶のエピジェネティックな制御機構を明らかにすることを目的とする。 線虫は機械的な刺激を受容するとその刺激に馴化し、その状態を長期にわたって保持する。これまで、この機械刺激の馴化学習・記憶をハイスループットに定量化する実験系はなかったことから、本研究ではまず、最初にこの実験系の確立に着手した。具体的には、線虫を飼育するプレート9つ同時に、任意の時間間隔で機械刺激を加えることを可能にすることにより、自動的に線虫の記憶のトレーニングを行えるようにした。また、レーザー光を分岐させることにより、蛍光ラベルされたトランスジェニックの個体と蛍光ラベルされていない野生株を、行動解析中にリアルタイムで識別することが可能となった。さらに、4台のUSBカメラを利用し、それぞれのプレート上の行動変化を同時に録画するため、LabVIEWによりプログラムを作製した。本装置を用い、まず、記憶の制御因子として深く知られるCREBの機能ニューロンの同定を試みた結果、機能ニューロンを2つに絞り込むことに成功した。CREBの機能は記憶のありかと密接に関連していることから、同定されたニューロンは機械刺激の記憶を担うニューロンである可能性が高い。現在、これらの1年目の結果をもとに、生化学や遺伝学を利用したアプローチによりエピジェネティックな因子のスクリーニングを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、(1)線虫の記憶・学習を定量的に解析するための実験系の構築と(2)その実験系に立脚した、記憶のエピジェネティックな制御機構の解析である。2年間の研究期間であること、また計画(1)は既に達成済みであることから、計画の進捗状況としておおむね順調であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、実験系の構築が完了したことから、今後は、それを駆使し、エピジェネティックな分子メカニズムの解析を行う。実際に、線虫の馴化学習・記憶において転写因子CREBが関わる実験結果を得ており、今後は、その周辺の遺伝子発現の制御因子を突き止める。また、記憶を担うニューロンも同定されていることから、そのニューロンにおいて、同定された制御因子が実際に機能するかどうかも確認する。
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