研究課題/領域番号 |
25840133
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
菅原 文昭 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00611005)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 進化発生学 / 円口類 / ヌタウナギ / ヤツメウナギ / 鼻プラコード / 下垂体プラコード / 細胞系譜 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、蛍光色素DiI注入による予定プラコード領域の細胞の系譜を追う実験を行った。ヤツメウナギの実験ができる期間は限られており、例数を増やすには複数年での実験が必要となる。神経板形成期であるst.18.5胚の前方神経版境界(ANB)近傍を狙ってDiIを注入し、尾芽胚期であるst.25に固定し、蛍光を観察した。これらの結果、ヤツメウナギ鼻プラコードに分布する細胞は前方神経板のやや側方の外胚葉に由来する可能性が示唆された。これは鼻孔が対である顎口類と同じであることを意味する。ただし、神経板正中部境界の細胞がが鼻プラコードに分化するのか、それとも下垂体プラコードに分化するのかは例数が足りず、不明な点が残った。今後はより詳細なプラコード予定運命図を作成すべく追加実験を行いたい。
遺伝子発現解析は予定通り進行している。汎プラコード領域(Pan-Placodal Region; PPR)に特異的に発現する遺伝子群(Eya, Six1/4など)の特徴的な馬蹄形発現領域を神経板の前方に確認した。これは円口類では初めての報告となる。また、鼻プラコード特異的マーカー、および下垂体特異的マーカー遺伝子群の発現解析も合わせて進めた。これらヤツメウナギにおけるin situハイブリダイゼーションの技術についてまとめたものを執筆し、その書籍が出版された。
ヌタウナギ胚は数個であるが正常発生個体を得ることができ、PFAにて固定した。今後は切片作成を行い、遺伝子発現解析に進みたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の解析により、細胞系譜解析において一定の結果が得られた。ただし例数が少ないこと、より詳細な部位、特に神経板正中部の細胞運命をより正確に知るために次最終年度も実験を行いたい。
遺伝子発現解析は順調に進んでおり、汎プラコード領域(Pan Placodal Region; PPR)特異的遺伝子、および鼻、下垂体特異的遺伝子群のクローニング、およびその発現パターンを観察することに成功した。
ヌタウナギ胚も少数ながら得ることができ、今後解析に進めることができる状態にあることから、研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DiIインジェクションによる細胞系譜追跡をより精度の高いものにするために、実験の精度を高め、より正確な解析を行いたい。
また、本研究の成果を発表すべく、現在論文を執筆中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属異動先で共通の機器および試薬が使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞標識のための試薬、および胚の培養に必要な消耗品の購入に充てたい。
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