研究課題
本研究ではまず、ヤツメウナギ鼻下垂体プラコードの形態的な発生過程を、走査電子顕微鏡、および共焦点顕微鏡を用いて時系列的に観察した。その結果、鼻プラコードになる部分の外胚葉では肥厚が発生初期より観察されたものの、同じ時期の視床下部に接する外胚葉、すなわち顎口類においてはラトケ嚢が発生する部分に、明瞭な肥厚は観察されなかった。これは先行研究においても観察されており、先行研究ではその理由について、前方、すなわち鼻プラコード側に発生した細胞が後方に伸長し、二次的に視床下部と接することで下垂体プラコードが形成されると考察している。これを確認するため、鼻プラコード、下垂体プラコードに特異的な遺伝子発現を観察したところ、視床下部に接する外胚葉では、肥厚が見られる以前の発生ステージにおいて、下垂体特異的な遺伝子の発現が見られることがわかった。さらに、脂溶性色素DiIによる細胞トレース実験を行ったところ、下垂体プラコードになる細胞は、鼻プラコード部より移動して供給されるのではなく、初期より視床下部に接している外胚葉より発生することがわかった。これはヤツメウナギと顎口類の下垂体プラコードの発生機構がきわめて類似していることを示唆する。続いて、ヤツメウナギ初期神経胚の前プラコード領域(PPR)の細胞にDiIで標識し、どの部位の細胞が鼻プラコード、下垂体プラコードを形成するのか解析した。この結果は得られているが、結果のまとめと考察はこれから行う。ヌタウナギについては数少ないものの胚を得ることに成功した。本研究は脳との関連が深いが、ヌタウナギの脳の発生に関する知見が乏しかったため、まず脳の領域化に関する解析を行い、論文にまとめた。本研究主題については、薄切切片の作成、関連遺伝子のクローニングを現在行っており、ヤツメウナギで得られた知見が円口類一般にあてはまるか確認したい。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
Nature
巻: 531 ページ: 97-100
10.1038/nature16518
BMC evolutionary biology
巻: 15
10.1186/s12862-015-0351-z
http://first.lifesciencedb.jp/archives/12168
http://www.riken.jp/pr/press/2016/20160216_1/