研究実績の概要 |
海洋島の生物にはいくつもの進化の共通パターンが観察される。特に海流散布植物が島の内陸環境で生育する生態的シフトは、多くの海洋島で見られる進化現象である。本研究では、海流散布植物が内陸環境へ適応する際の種子散布様式の進化と遺伝的基盤を解明することを目的にしている。 平成26年度は奄美大島と小笠原諸島父島で野外調査を行い、遺伝子解析用試料の採集と証拠標本の作成をおこなった。これまでに採集した小笠原諸島、琉球列島、南太平洋諸島の約700点の遺伝子解析用試料について、DNAの抽出と定量を完了した。DNA抽出の予備実験ではCTAB法とカラム法の両者を比較し、多糖類を多く含む本種ではカラム法が適していたため、実験はすべてカラム法で実施した。 次に、次世代シーケンサーによる一塩基多型の検出(改良ddRAD)ための実験条件の設定をおこなった。本種は正確なゲノムサイズが分かっていないため、4組の制限酵素の組み合わせ(SphI-EcoRI, SphI-MluCI, NlaIII-EcoRI, MluCI-NlaIII)を試し、適正な断片長が得られる組み合わせを検討した。その結果、 SphI-MluCIの組み合わせで理想的な断片長さを得られることが分かった。次年度は各集団役20個体ずつを用いて、一塩基多型に関するデータを取得していく。 一部のサンプルを用いて葉緑体DNAの全塩基配列を比較し、種内に10箇所の突然変異があることを明らかにした。次年度はddRADの解析を中心に進めるが、必要に応じて葉緑体DNAの全塩基配列を比較も含めていきたいと考えている。
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