研究課題/領域番号 |
25840138
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
角川 洋子 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70575141)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 渓流沿い植物 / 細葉形質 / 葉柄形質 / 遺伝相関 / 自然選択 / 適応進化 / 適応的形質 |
研究概要 |
ゼンマイ亜属において作成した種間遺伝地図に基づいて人工交配集団を解析した結果から、渓流沿い植物ヤシャゼンマイにおける細葉形質は複数の遺伝子に支配されていることが示されている。小羽片の基部の角度と下側最下の葉脈から分岐する脈の数は相関がある(r= 0.512、p< 0.001)が、表現型に最も大きい効果を及ぼす遺伝子座は連鎖群10に位置しており、基部の角度のみに遺伝効果がある。ゼンマイ亜属での幼個体の解析は成長段階を揃えるのが難しいが、頂羽片と1対の側羽片が独立した段階で解析すると、分子マーカーとの相関解析でも一定の結果が得られることがわかってきた。そこで、本研究では幼個体における葉柄の太さの解析を行なった。解析に用いたのは、ヤシャゼンマイとゼンマイの雑種第二代と倍加半数体である。幼個体における解析の結果、形質間の相関は、基部の角度と葉柄の太さにもあった。これらの形質は連鎖群9上のEST_219と相関があることが明らかになった。基部の角度と脈数に関しても両方とも連鎖群1上のEST_815と相関があることから、必ずしも葉形に与える影響は大きくはないが、複数の形質に影響を与える遺伝子が存在するか、同じ連鎖群上に近接して遺伝子が存在するために、雑種個体群において各形質が独立に分離しないことが考えられる。これらのことから、ゼンマイ亜属における渓流帯への侵入においては、細葉形質の獲得にともなって、互いに遺伝的に相関のある複数の形質が進化したことが考えられる。幼個体の葉形形質の解析から、渓流帯では早い時期に三出複葉になり、かつ、相対的に太い葉柄をもつことが適応的である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝地図の高密度化は遅れているが、既存の遺伝地図を用いたmap-basedの解析結果から、複数の形質に影響を与えることで、強い分断性選択がかかり、種分化過程で生殖的隔離が完全でなくとも、形質の分化が保たれていることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シークエンサーを用いた解析から得られている配列データから分子マーカーを開発し、特に渓流沿い植物の適応的形質に関わっているゲノム領域に分子マーカーを追加することを目標とする。また、解析個体を増やして、適応的形質間の遺伝相関と種間の分断性淘汰に関する論文を公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
葉形解析のための機器(キーエンス社の厚膜測定センサー)を購入したが、キャリブレーションに用いるミツトヨのゲージブロックが受注生産であり、昨年度中に購入することができなかった。 ミツトヨのゲージブロックは5月納入予定であり、次年度使用額で支払う予定である。
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