研究課題/領域番号 |
25840140
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
富川 光 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70452597)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 系統地理 / 分子系統解析 / 分類 / 中国地方 / ミトコンドリアDNA / 核DNA |
研究概要 |
中国地方を中心に,ヨコエビ類,陸産貝類,ヒル類の形態および遺伝子データに基づいた系統分類学的研究を行った. ヨコエビ類については,滋賀県の河川間隙水からアゴナガヨコエビ科サワヨコエビ属の未記載種を発見し,記載・命名した.核DNAを用いた分子系統解析により,サワヨコエビ属では海から間隙水環境を経て陸水へ進出した可能性が示唆された.一方で,形態の酷似するヤマトヨコエビ及びタキヨコエビの単系統性については明確な結論は出せなかった.また,本州,四国,九州,壱岐,対馬に分布するニッポンヨコエビについては,遺伝的・形態的に明瞭に区別できる2種が含まれていることを明らかにした. 陸産貝類については,オトメマイマイ属のうち,キュウシュウシロマイマイの4亜種(キュウシュウシロマイマイ,コウダカシロマイマイ,アラハダシロマイマイ,ヌノメシロマイマイ)についてミトコンドリアDNAを用いた分子系統解析を行った.その結果,キュウシュウシロマイマイ及びコウダカシロマイマイは遺伝的に別種レベルまで分化していること,これら2亜種内にはさらに遺伝的に分化した系統が存在することが明らかになった.一方,アラハダシロマイマイはコウダカシロマイマイと,ヌノメシロマイマイは別種のシロマイマイと遺伝的に非常に近縁であることが分かった.今後,各系統間の形態的差異や生殖隔離の有無について検討する必要がある. ヒル類については,日本各地の淡水域に生息するシマイシビルのミトコンドリアDNAを用いた分子系統解析を行い,遺伝的に分化した2つの系統の存在を明らかにした.2系統の地理的境界は兵庫県付近にあるが,なぜこの場所に系統の境界が存在するのか,その理由の解明は今後の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度はヨコエビ類,陸産貝類,ヒル類のすべてにおいて,当初予定していた分類学的検討と分子系統解析を行い,結果を得ることができた.特に,分類学的位置が明らかではなかったサワヨコエビ属及びニッポンヨコエビ属の未記載種について分類学的検討を行い,分類学的位置を確立できたことは大きな成果である.一方,分子系統解析ではミトコンドリアと核の両方のDNAの塩基配列データを用いる予定であったが,分類群によってはプライマーがうまく合わなかったためにデータが得られなかったことは今後の課題として挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
ヨコエビ類,陸産貝類,ヒル類を中心に,タクソンサンプリングを充実させるとともに,解析に用いる遺伝子領域を増やして系統関係の解明を進める.また,分類学的問題の残されている種について分類学的位置の確立を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は調査日数や消耗品の消費が予定より少なかったこと,備品の購入金額を予定以下に抑えられたことにより,使用金額が当初考えていたよりも少ない額になった. 平成26年度は,昨年度と比較にしてテータ解析に用いるサンプル数が多くなること,成果発表のための学会発表が増えることが予想されるため,繰越金のほぼ全額を使用する予定である.
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