古細菌最大数のグループであるHalobacteria綱に分類される好塩性古細菌は多くの種において複数の16S rRNA遺伝子コピーが存在し、その中にはコピー間の相同性が低いものもあり、各々の配列で系統樹のトポロジーが大きく異なることが指摘されている。申請者はこれまでにHalobacteria綱がオーソロガス16S rRNA遺伝子の上流遺伝子群により二つのグループに分かれることを示しており、またrpoB’遺伝子塩基配列による系統解析の結果もその結果を支持していた。本研究の申請時43属148種であった好塩性古細菌は50属213種まで膨れあがり、その系統関係はより複雑化してきた。 平成25年度および平成26年度では、主に新属新種として提唱された菌株のオーソロガス16S rRNA遺伝子およびrpoB遺伝子群の解析を行ってきた。また、系統関係が複雑なHaloarcula属およびその近縁種の解析を中心に表現性解析を行った。さらに、統一して生理生化学試験が行われていないHalococcus属について表現性解析を行い、新種を含めIJSEM誌に発表し採択された。 この間に、Guptaらによりゲノム配列解析によりHalobacteria綱の再分類が提案されたが、我々の結果との間に矛盾があった。そこで平成27年度は、引き続き遺伝子型を中心に解析を行った。新たに提唱された新属新種のうち入手可能な株のオーソロガス16S rRNA遺伝子およびrpoB遺伝子群(rpoH-rpoB"-rpoB)の塩基配列を決定した。さらにこれら系統樹のクラスターごとに代表選び、DNA-DNAハイブリダイゼーションを行った。その結果、Halobacteria綱においては種間だけでなく属間においてもDNA-DNAハイブリダイゼーション解析が有用であることが示された。
|