研究課題
本研究は、同所的に生息する2種の近縁なタナゴ類であるヤリタナゴとアブラボテについて、2種間の生殖隔離に関わる形質の遺伝的基盤を特定すること、および野外集団でそれら2種間に隔離が成立する条件を解明することを目的としている。今年度は、2015年度に研究室で作出したヤリタナゴ-アブラボテ種間雑種2代目(F2)77個体を固定・写真撮影・形態測定及び標本作製を行った。また各個体の鰭からDNAを抽出した。また、2014年度に作出したF2雑種90個体についてRAD-Seqを実施し、連鎖地図の作製及び種差に関わる形質のQTLマッピングを行うためのSNPマーカーの作成を試みた。RADライブラリ作成後、次世代シーケンサー(Illumina HiSeq 4000)により1個体あたり300,000-800,000リード程度の塩基配列断片を決定した。しかし、得られたデータ量が少なかったためか、すべての個体に共有されるSNPマーカーを十分に得ることができなかった。今後、RAD-Seq解析については、再度次世代シーケンサーによる塩基配列決定を行うことで、遺伝学的解析に使用可能なSNPマーカーの数を増やすとともに、解析に使用するF2雑種の個体数もさらに増やす予定である。2013年度以降実施しているタナゴ類2種のRNA-Seqに基づく多数遺伝子座による系統解析・遺伝子発現解析については、現在各種4地域集団および近縁種5種のデータを取得し、約10,000遺伝子座、300万塩基の配列データに基づく系統解析を実施した。その結果、種内の地域変異の詳細及び種間交雑の実態、種特異的な遺伝子変異などを明らかにすることができた。これらの成果については現在論文を作成中であり、国際学術雑誌に投稿する予定である。
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http://hashiyuki.hatenablog.com