研究課題/領域番号 |
25840150
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 徳島県立博物館 |
研究代表者 |
山田 量崇 徳島県立博物館, 自然課, 学芸員 (20463474)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 外傷性受精 / 交尾器形態 / トコジラミ上科 |
研究概要 |
平成25年度は、(1)国外博物館におけるタイプ標本調査と野外調査によるサンプリング、(2)交尾実験による接合部等の観察、(3)雌雄の内部生殖器の観察、などを行った。(1)については、大英自然史博物館とパリ国立自然史博物館で、主にハナカメムシ科各属のタイプ標本の写真撮影と形態形質の抽出を行った。野外調査については、2014年3月にタイへ赴き、インドシナ半島に分布する主要な分類群のサンプリングを行った。(2)と(3)については、雌にectospermalege(副生殖構造の一部で雄の把握器を受け入れる器官)を欠くAmphiareus obscuriceps、Dufouriellus ater、Almeida pilosaを選定して実施した。交尾開始後に液体窒素による瞬間凍結法を試みたものの、交尾時間が短く、わずかな刺激で虫体が離れたため、成功率が非常に低かった。雌の副生殖構造の観察には、交尾後に雌の腹部に傷跡(交尾時創傷)が残ることを想定し、交尾済み個体を用いた。その結果、D. aterでは第7-8腹節の間接膜中央部に傷跡が観察され、雄の把握器を受け入れる第7腹節後縁が前方にやや湾入することを確認した。これはectospermalegeの機能と部分的に一致する。一方で、A. obscuricepsでは、雌の第7-8腹節右側方の間接膜に数個の黒色の傷跡が確認されたものの、形態の変化は見られなかった。外皮の直下にmesospermalege(精子が移送される器官)が確認されたため、雄はectospermalegeを介することなく精子を直接mesospermalegeへ送り込むことが示唆された。A. pilosaについては、得られた個体数が少なかったことと、交尾実験が失敗したため雌の副生殖構造の十分な観察ができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象種の確保が計画通り進まず、得られた個体数が貧弱だったこと、想定していた操作実験の確立が不十分だったことなどが要因である。国外研究機関における標本調査については、おおむね計画通り進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
タイプ標本調査ならびに野外調査は、引き続き計画通り進め、系統解析のための形質抽出を行う。成功率が低かった操作実験は、実験ケースの形状やケースに入れる個体数などを検討しつつ、精度の向上に努める。個体数の確保が困難な種については、可能な範囲で累代飼育なども試みて十分なサンプル数を集める。26年度は、分子系統解析のために、DNA抽出および塩基配列の決定も進めていきたい。
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