平成26年度は、生きたニホンホホビロコメツキモドキ成虫のいるメダケ節間内より非共生菌の分離を試み、共生酵母に加えて4種類の糸状菌が分離された。これらの糸状菌が本共生系にとって害となるかどうかを検証するために、幼虫にこれらの糸状菌を餌として与えて飼育したところ、酵母を餌とした場合と比べて生存率の減少、発育期間の延長、成虫体サイズの減少が見られた。酵母とこれらの糸状菌を対峙培養したところ、酵母の増殖が阻害された。これらの実験により、本栽培共生系には確かに有害となる非共生菌が存在し、侵入し得ることが明らかとなった。この結果について、学会発表を行った。 共生酵母を垂直伝播するために、メス成虫は酵母を腹端部にある嚢状器官(菌嚢)に入れて運搬するが、いつ、どのように酵母を入れるかは不明であった。菌嚢内の菌相の変化を調べるため、野外に出て活動する前と野外で活動中のメス成虫の菌嚢から菌の分離を行った。その結果、菌嚢からは酵母のみが得られ、特に野外で活動中の個体からは多量の酵母が分離された。このことから、メス成虫は、野外に脱出する前、自身が育った節間内で酵母を菌嚢に取込むこと、野外に脱出後、なんらかの方法を用いて菌嚢内の酵母の量を増やすことが示唆された。 コメツキモドキ族の系統関係及び栽培共生の進化に関して、国内外でサンプリングと生態調査を行った。国内では、京都府と福井県にて、それぞれツマグロヒメコメツキモドキとクロアシコメツキモドキの調査を行った。国外では、ベトナムにて調査を行い、ニホンホホビロコメツキモドキ近縁種の生態調査を行った。 本研究によって、ニホンホホビロコメツキモドキ-酵母栽培共生系について、害菌が存在し、農園内に侵入すること、菌嚢内では酵母は害菌に汚染されていないことが示唆された。
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