研究課題/領域番号 |
25840159
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
畑 啓生 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (00510512)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生態学 / 種間関係 / 藻類 / 藻食魚 |
研究概要 |
太平洋の沿岸域に広く生息するなわばり性藻食魚類をモデルとし、その藻類利用・管理様式の多様化が多種共存を可能としているという仮説の検証を目的とする。鹿児島県奄美大島と高知県横浪半島、インドネシアスラウェシ島でなわばり性スズメダイそれぞれ4種と1種、2種について水中ビデオカメラを用い行動記録を行い、またなわばり内に繁茂する藻類群落の採集を行った。その結果、スズメダイの藻園管理は種ごとに集約的から粗放的まで勾配があることが分かった。クロソラスズメダイが最も集約的で、最も狭い藻園を、除藻し、全ての侵入者を排除することで維持しており、一方セダカスズメダイが最も粗放的で、広いなわばりを、侵入者をほとんど追い払うことなく維持しており、ルリホシスズメダイとキオビスズメダイ、フチドリスズメダイは中間的であった。藻園の面積と、藻園への侵入者の追い払いの頻度は負の相関関係にあることが分かり、すなわち、狭い藻園ほど侵入者の追い払いを徹底的に行い、一方藻園が広くなるほど侵入者の追い払いにコストをかけないことがわかった。多量の映像データが得られているため、これらを解析することで、スズメダイの藻園管理行動における地理的変異と、他種との藻園管理におけるニッチ分割を明らかにすることができると考えている。また、オーストラリアのARC Centre of Excellence for Integrated Coral Reef StudiesのDaniela M. Ceccarelli博士と共著でスズメダイの藻園管理についての総説原稿を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は太平洋の沿岸域に広く生息するなわばり性藻食魚類をモデルとし、その藻類利用・管理様式の多様化が多種共存を可能としているという仮説の検証を目的としている。今年度は計5種の藻園管理行動について、複数地点で調査を行い、多数の動画データを得ることができた。またその解析も進み、種によって藻園利用・管理様式が多様であり、それは単位面積当たり高い労力をかけて、狭い藻園を維持する集約的管理から、単位面積当たりにかける労力は低く、広い藻園を維持する粗放的管理までと多様であることを示すことができた。想定より多くの動画サンプルを得ることができたため、今後はこの解析を進めていく。また、プロジェクト初年度にあたる本年に、オーストラリアのARC Centre of Excellence for Integrated Coral Reef StudiesのDaniela M. Ceccarelli博士と共著でスズメダイの藻園管理についての総説原稿を作成した。これにより先行研究の結果を網羅的にまとめることができ、スズメダイの藻園管理は種ごとに多様であり、かつ地域変異にも富み、さらに一地域においてもサンゴ礁のなかの場所によって多様であることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
大平洋のスズメダイ類について、引き続き藻園管理行動の記録、解析を行い、藻園の利用・管理行動の種間の多様性と、種内における地理的変異について明らかにしていく。さらに今後の研究において、サンゴ礁のスズメダイのみならず、アフリカタンガニイカ湖のシクリッド(カワスズメ)科魚類にも対象を広げる。シクリッド科はスズメダイ科と系統的に姉妹群をなし、スズメダイはサンゴ礁域で藻食性を進化させ、シクリッドは淡水域で藻食性を進化させている。いずれもなわばりを防衛して藻園を維持するが、この行動は独立に進化したと考えられるため、これらを比較することで水域の一次生産者とそれを食べる藻食魚との関係性のネットワークにおける相違点と共通点を明らかにすることができる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は資料整理補助のアルバイトを雇うことができなかったため。 次年度においては資料整理補助のアルバイトを雇い使用する。
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