研究課題
若手研究(B)
深海熱水噴出域には独立栄養性の硫黄酸化細菌やメタン酸化細菌と共生することで栄養を獲得する動物の存在が知られている。しかしながら、それらの共生細菌の純粋培養に成功した例はない。本研究では沖縄トラフの熱水噴出域に生息し、硫黄酸化細菌やメタン酸化細菌と外部共生するゴエモンコシオリエビを研究対象として、その共生菌相のメタン酸化細菌の集積培養と純粋培養を試みた。目的のメタン酸化細菌の集積培養条件を整えるには、ゴエモンコシオリエビの飼育水に可燃性ガスであるメタンガスを溶存させることや、低温の海水の場合、溶存酸素濃度が12 mg/L程度まで高まるので飼育水の溶存酸素濃度を低く保つことが必要である。本研究では申請者がもつ特許申請技術やサーモメーターと冷却機を合わせた温度制御技術を用いて、目的とする条件を整えた水槽の構築ができた。さらに、深海熱水域から生かした状態で捕獲し、持ち帰ったゴエモンコシオリエビをこの水槽に投入し、長期飼育することにも成功した。共生菌相にメタン酸化細菌が集積されているかを確認するため、16S rRNA遺伝子を用いた菌相解析とメタン酸化細菌特異的プライマーを用いた定量PCR解析を行った。その結果、飼育後の共生菌相に同系統のメタン酸化細菌が集積していることが確かめられた。また、蛍光in situハイブリダイゼーションによっても目的とする共生細菌の集積効果を確かめられた。本年度は集積培養された菌相を宿主から離して試験管で培養し、メタン酸化細菌の純粋培養と同定を行うことを計画している。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、①メタンを添加した水槽で捕獲したゴエモンコシオリエビを飼育し、メタン酸化細菌を集積培養することと、②集積培養された菌相を宿主から離して試験管で培養し、メタン酸化細菌の純粋培養と同定を行うことを目標としている。そして現在までに、①のメタン飼育による共生メタン酸化細菌の集積を達成した。したがって、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
今後は共生メタン酸化細菌の純粋培養を目標とし、研究を推進する計画である。純粋培養は外部共生菌が付着するゴエモンコシオリエビの体毛をメタン酸化細菌の植菌源とし、限外希釈培養で分離培養する。また、分離培養条件は集積培養条件を基本とする予定である。
概ね内訳通りの支出であるが、旅費とその他に計上した投稿料の見積りと実支出に差が生じた。見積もった旅費よりも実際に使用した旅費が少なくなった理由は、旅費がかかる学会に参加しなかったためである。また、見積もった投稿料が使用されなかった理由は、当該年度に掲載された雑誌がnatureのグループのもので投稿料金がかからなかったからである。本年度は共生メタン酸化細菌の純粋培養を目標としているので、培養微生物のDNA抽出やDNAシークエンスなどにかかわる試薬や微生物の培養機器の購入に利用する予定である。
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