研究課題
若手研究(B)
霊長類の骨格の中で、踵骨は比較的よく機能形態学的・古生物学的研究がされている。しかし、現生の踵骨サイズの種内変異を詳しく調べた研究はまだ少ないので、化石の踵骨の変異を考えるときの基準に乏しかった。本研究の目的は、標本をもとにした基礎研究により、化石踵骨の論理的な同定・分類を可能にし、化石霊長類やその他の化石哺乳類の古生態や古環境のような発展的研究の進展に活かすことである。初年度である本年度は、まず踵骨の計測部位の確定のため、骨格標本が数多くされている京都大学霊長類研究所で、ニホンザルの踵骨(および比較研究のための歯)の細かい様々な部位の計測、および写真撮影、体重やその他のデータの取得をおこなった。その結果、踵骨についてノギスで安定して計測できる部位をほぼ特定できた。そして、それらの距骨の計測部位について、データベースを作る基礎が出来上がった。また、予備的な統計解析をおこなった。その結果、踵骨には全体のサイズにのみ雄雌差があるらしいことがわかった。また、幼獣に関して、自然対数変換したデータを用いて、体重と踵骨の各計測値との単変量アロメトリーを調べたところ、reduced major axisについての雌雄差はほとんどなかった。これは、成獣における雌雄差は、性の違いというよりもむしろ体重(身体の大きさ)の違いに起因することをしめしていると考えられる。さらに、化石哺乳類の踵骨について予備的な計測や比較・記載研究をモンゴル古生物学センターおよびロサンゼルス郡自然史博物館でおこなった。上記の結果については、ニホンザルについての予備的な発表を霊長類学会・哺乳類学会合同大会および古生物学会で発表した。モンゴルから見つかったエンテロドン類(化石偶蹄類)の踵骨化石については、記載論文を発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初の今年度の主目的は、実際の標本の計測と統計処理をおこなうことにより、本研究に最適な踵骨の計測部位を探し出すことであった。その目的はほぼ達成され、データベース作成の基礎を作ることができた。これにより、次年度より大量にデータ取得をおこなうことが可能になった。また、目的としていた予備的な学会発表も2回行うことができて、専門家からのアドバイス・議論を受けることができた。したがって、当初計画していた今年度の研究目的はおおむね達成できていると考えられる。
次年度の主な目的は、今年度で決定できた最適な計測部位を用いたデータの増大である。計測部位は決定しているので、今年度よりも早いペースでデータ取得が進むことが期待される。そして、計測データを用いて,踵骨サイズの変異と、踵骨サイズと歯サイズ(体サイズ)との関係性を調べる。また、前年度に取得したデータの再検討、学会発表とそこでの議論、および今年度取得したモールド(雌型)から雄型(キャスト)の作成などもおこなう。今のところ、研究計画の大幅な変更や、研究を遂行する上での大きな問題はないと思われる。
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The Bulletin of Research Institute of Natural Sciences, Okayama University of Science
巻: 39 ページ: 37-41