ダイズの個々の品種が持つ日長感応性の違いは、それぞれの品種の地域適応性に重要な役割を果たしている。これまでの研究において、E1遺伝子は、劣性の対立遺伝子を持つことで開花期に対して1週間以上の違いを生む174個のアミノ酸をコードする遺伝子であるが、このE1遺伝子の機能を明らかにした報告は未だなされていない。 そこで、ダイズの遺伝資源が示す開花期の遺伝的多様性に対して、ダイズにおける開花抑制因子であるE1遺伝子および、花成の最終的な誘導に関わると考えられるダイズフロリゲン遺伝子の発現量との関係について、ダイズフロリゲン遺伝子と開花期との間には高い負の相関が認められた一方で、E1遺伝子の発現量と開花期の間には高い相関が認められなかった。このことはE1遺伝子の持つ、ダイズ開花期の多様性全体に対する寄与は低いものと考えられた。 E1遺伝子のモデル植物の生育に及ぼす影響を評価した結果、E1遺伝子を導入した形質転換体において導入遺伝子の遺伝子発現は確認できたが、シロイヌナズナの成育へ及ぼす影響は、野生型と形質転換体の表現型には、有意な差は認められなかった。 E1遺伝子の細胞内局在をシロイヌナズナのプロトプラストを用いて評価したところ、自然変異で認められた劣性の対立遺伝子とは異なる変異を持つ3種類の劣性e1対立遺伝子で局在が変化したことから、異なるメカニズムで開花期を変化させる特性を持つ対立遺伝子が存在すると考えらえた。E1遺伝子がFT2aプロモーターに作用し、GUSレポーター遺伝子の発現抑制に機能するかどうかをGUSタンパクの基質を用いた蛍光法で評価を行ったが、長日条件、短日条件のいずれにおいても正常型と劣性の対立遺伝子間にレポーター遺伝子の抑制には大きな差が認められなかった。
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