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2013 年度 実施状況報告書

古代と中世における農耕地雑草の多様性変化と人間活動の関係

研究課題

研究課題/領域番号 25850009
研究種目

若手研究(B)

研究機関総合研究大学院大学

研究代表者

那須 浩郎  総合研究大学院大学, その他の研究科, 助教 (60390704)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード雑草 / 多様性 / 水田 / 埋土種子 / 遺跡 / 古代 / 中世
研究概要

本年度は、神奈川県茅ケ崎市本村居村B遺跡の古代から現代までの水田遺構を対象に、雑草種子の分析を実施した。この遺跡では、7世紀後半~9世紀中葉、9世紀中葉~10世紀前半、10世紀~11世紀、中世、近世(宝永以降)、近世~近現代、昭和期の計7時期の水田遺構が確認されている。これらの各時期の水田遺構から採取した土壌サンプルを水洗選別し、堆積物中に含まれる雑草種子を分析した。その結果、水田雑草の種組成は大きく3つの時期で変化していたことが明らかになった。まず、古代~中世の時期は、ミズアオイ属、オモダカ科、ホタルイ属などの抽水性の草本が多い湿田環境だった。これが近世~近現代になると、ホッスモ、トリゲモ/オオトリゲモなどの沈水性植物やタガラシの多い湿田環境へと変化した。この時期に水田の水位が高く維持されるようになったと考えられるが、この変化の原因が、江戸時代以降の水田経営の変化によるものか、自然の地下水位の変動によるものかは現在のところ不明である。このような水田植生は、昭和期に激変した。これまで50%程度で優占していた水田(水中)草本は5%程度に急減し、イグサ科/ホシクサ科、スズメノテッポウ、ノミノフスマなどの田畑共通(湿性)草本とヘビイチゴなどの畑地(人里)草本が多い水田景観へと変化した。この原因として、乾田化による地下水位の低下の影響があった可能性が考えられた。種数は古代から中世にかけて増加し、近世までは30~40種程度で安定しているが、近世~近現代と昭和期に21~10種程度まで減少した。シャノンの多様度指数でみると、中世から近世にかけて多様度が急激に減少し、昭和期に再び急減することが明らかになった。
また本年度は、現在の水田雑草の埋土種子調査も開始し、埼玉県入間市西久保湿地の赤米復元水田にて、水田雑草植生と埋土種子との関係の調査のための試料を採取した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた、本村居村B遺跡の種子分析が順調に進み、古代から中世にかけての水田雑草の多様性が、近世や近現代、昭和期に比べて高かったことを明らかにすることができた。ただし、今年度は遺跡出土種子の分析に時間がかかったため、当初予定していた雑草種子のデータベース化についての進捗が遅れている。

今後の研究の推進方策

今後は、水田雑草の多様性のピークが中世にある可能性をさらに検証するために、Reafaction指数などを用いて多様度を再解析するとともに、他の遺跡での分析結果や古墳時代および弥生時代の水田と比較する。また、現在の水田の埋土種子と水田雑草の多様性の関係を赤米の実験水田で調査し、その分析をを進める。また、研究補助者を雇用して、雑草種子のデータベース化を進める。

次年度の研究費の使用計画

当初の予定より、種子分析補助およびデータベース作成のための人件費に経費を多く支出する必要が出てきた。従って、物品費と旅費を節約して次年度に回し、次年度の人件費を増額することにした。
次年度繰り越し分は、種子分析補助およびデータベース作成のための人件費に充てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 本村居村B遺跡の大型植物遺体分析-古代から現代までの水田雑草多様性の変遷-2013

    • 著者名/発表者名
      那須浩郎
    • 雑誌名

      茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団調査報告 「本村居村B遺跡(第4次)」

      巻: 36 ページ: 184-195

  • [雑誌論文] イネの栽培化のはじまり2013

    • 著者名/発表者名
      那須浩郎
    • 雑誌名

      月刊みんぱく

      巻: 37(12) ページ: 4-5

  • [学会発表] 古代から近代までの水田雑草の多様性変化:茅ヶ崎市本村居村B遺跡での事例

    • 著者名/発表者名
      那須浩郎
    • 学会等名
      第28回日本植生史学会
    • 発表場所
      高知
  • [学会発表] 縄文時代中期におけるダイズとアズキの野生種と栽培種の共存

    • 著者名/発表者名
      那須浩郎・佐々木由香・会田進・中沢道彦
    • 学会等名
      第28回日本植生史学会
    • 発表場所
      高知
  • [学会発表] フローテーション法による炭化マメの検出の成果とその意味

    • 著者名/発表者名
      那須浩郎
    • 学会等名
      講演会・フリートーキング「縄文農耕を問う(中部山岳地域縄文時代マメ栽培化過程の解明)」
    • 発表場所
      原村
    • 招待講演
  • [図書] イネと出会った縄文人(「ここまでわかった!縄文人の植物利用」)2014

    • 著者名/発表者名
      那須浩郎
    • 総ページ数
      186-205(223)
    • 出版者
      新泉社

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公開日: 2015-05-28  

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