研究課題
最終年度にはこれまでの成果を統合して、縄文時代から現代までの水田雑草の多様性変化をシャノンの多様度指数と、Individual-based Rarefaction Curve(個体数:種数累積曲線)により評価した。その結果、水田雑草の多様性は、縄文/弥生移行期から飛鳥~平安時代にかけて増加し、中世で最も高くなることを明らかにした。その後は近世から多様性が減少し、昭和期に激減したことも明らかになった。ところが、平成の無農薬で営まれている谷戸田では、水田雑草の多様性が近世レベルまで回復していることも明らかになった。これらの多様性変化の原因を検討した結果、弥生時代以降の増加は史前帰化植物としての増加あるいは従来の雑草の生育地の拡大が考えられた。古代~中世にかけて多様性が最大となったのは、条里制水田や現在の田植法による農法の普及、有機肥料などの導入により、中規模攪乱の状態となり、多様性が最大になったと考えた。近世から多様性が減少したことの原因としては、雑草防除や地力増強としての冬季湛水農法の普及により水生植物が増加し、多様性が減少したと考えられた。また昭和期の急減は、農薬の使用だけでなく乾田化による水位の減少が大きく関わっていたと考えられる。現在の無農薬の谷戸田では、水位を維持しているので、雑草の多様性は高く回復したと考えた。
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