放射性物質の除染において雑草の除去は重要度が高いにもかかわらず、雑草の、特に多年生雑草の地下茎および根(以下、根系)内の放射性物質含量はほとんど調べられていない。そこで、農地において最も深層まで根系を発達させる多年生雑草スギナを調査対象とし、地下各層でのスギナ根系による放射性物質の蓄積について解明する。前年度は表土剥ぎ取りによる除染を行った農地において、土壌およびスギナ根系内の放射性セシウム含量を層別に掘り取り調査を行った。この結果、土壌中の放射性セシウム含量は20 cmより深い層および客土層である0 - 10 cm層 < 剥ぎ取られずに残った10 - 20 cm層となった。しかし、スギナ根系の放射性セシウム含量は前回と同様に土壌よりも含量の低下が緩やかか、あるいは低下がみられない圃場もあった。40 - 50 cm層では根系のセシウム含量が土壌含量よりも高い圃場も存在したことから、スギナ根系内では一定量の放射性セシウムが垂直移動していることが示唆された。しかし、各土層のスギナ根系の存在量は土壌に比べてきわめて小さいため、スギナ根系が蓄積した放射能物質が土壌全体に与える影響はほとんどないと考えられた。 今年度は、前年度までの実験の放射性セシウム分析や調査地の土壌一般分析などを行った。その結果、作物などでの知見と同様に、土壌中の交換性カリウム濃度が低いほど、また、全窒素濃度が高いほど根系内の放射性セシウム濃度が高まる傾向が見られた。一方、放射性セシウムの垂直移動については、土壌中の交換性カリウム、全窒素に加えて、根系の現存量が高いほど放射性セシウムを根系の下層へ移動させる傾向が見られた。これはスギナの生長が良好な場合に根系内を活発に養分移動させているためと考えられた。
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