低投入栽培下において生産性を向上させる為には、「根系からの窒素吸収能」と「窒素利用効率(吸収した窒素当たりの収量)」の向上が重要となる。1つの土壌窒素条件下では、これらが高まる有望系統が1系統認められたが、土壌窒素量が異なる場合には、その効果が異なってくる可能性がある。そこで本年度は、日本型普通品種「コシヒカリ」と根系からの窒素吸収能が高いインド型多収品種「タカナリ」の正逆の染色体置換系統群CSSLsのうち、有望な1系統と、有望な1系統の染色体領域を狭めた系統群(コシヒカリ背景6系統)を用いて、窒素肥料条件を変えたポット栽培にて乾物生産量と根系からの窒素吸収能に関わる形質を検討した。 その結果、有望系統ではこれまでの圃場での結果と同様に、全ての窒素施肥条件下において、乾物生産及び窒素吸収量が「コシヒカリ」よりもやや増加したものの、領域を狭めた系統群では効果が認められなかった。次いで、有望系統の根量と根の生理活性を示す出液速度を「コシヒカリ」と比較したところ、全ての窒素施肥条件下において、「コシヒカリ」よりも有望系統でやや根量が多く、出液速度がやや高い傾向があったが有意(5%)ではなかった。また領域を狭めた系統群では、全ての窒素施肥条件下で、根量と根の出液速度の全てにおいて、「コシヒカリ」との違いは認められなかった。以上のことから、乾物重と全窒素含量には、複数の遺伝子座の相互作用があることが様々な土壌窒素量条件下において確認された。
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