研究課題/領域番号 |
25850016
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
池田 和生 山形大学, 農学部, 准教授 (80555269)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | セイヨウナシ / 果皮色 / アントシアニン |
研究実績の概要 |
‘バートレット’の枝変わり変異体で全面着色タイプの‘ロージーレッドバートレット’、陽光面着色タイプの‘マックスレッドバートレット’、‘バートレット’の後代で陽光面着色タイプの‘カリフォルニア’を用い、生育期間の果皮における、アントシアニン生合成に関与する遺伝子ANS、UFGTおよび転写因子myb10の発現解析を行った。その結果、UFGTの発現量は生育初期の6月において各品種で特に差がみられ、その時期は赤着色品種の着色開始時期と重なっていた。また、ANSの7月、UFGTの6月の発現量はmyb10の発現量が増加した翌月に増加した。このことから、myb10はANSまたはUFGTの発現を調節する転写因子であることが示唆された。この結果は、これまでの‘スタークリムソン’における発現解析の結果、すなわち着色機構にはANSが重要であることをさらに裏付けるものであった。また、上記4品種に加え、‘ドワイエネ・ドゥ・コミス’、‘リーガル・レッド・コミス’、‘クラップス・フェボリット’、‘スタークリムソン’および‘バラード’を用いたDNAブロット分析の結果 、myb10およびUFGTのコード領域には大きな欠損・挿入などはみられず、赤着色形質はそれらの遺伝子の翻訳領域内の大きな変異によるものではないと考えられた。このことから、1塩基多型などのわずかな変異もしくは非翻訳領域における何らかの変異が着色形質の変異に影響を及ぼしている可能性が示唆された。しかしながら着色変異は複数の品種に見られる表現型であるが、着色パターンの同じ品種でも色素蓄積や関連遺伝子の発現パターンが異なっており、各品種固有の変異が存在する可能性が高く着色変異の原因解明にはそれぞれの変異前原品種と比較した個別の調査が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、全面着色形質を示す‘スタークリムソン’について、果皮における色素蓄積と遺伝子発現の解析により、アントシアニジン合成酵素遺伝子(ANS)がセイヨウナシの果皮におけるアントシアニン合成に非常に強く関与していることが示唆された。平成26年度には陽光面着色タイプと他の全面着色タイプの解析から同様にANSが着色機構に重要であることを示し、加えて転写因子myb10がANSまたはUFGTの発現を調節することが示唆された。また遺伝子構造解析からmyb10およびUFGTのコード領域には大きな欠損・挿入などがないことが明らかとなり、1塩基多型などのわずかな変異が関与していることが示唆されている。これらの結果はおおよそ申請時の計画に沿って解析が進められた結果であるが、遺伝子構造解析についてはDNAブロット分析について切断する制限酵素を新たに増やした解析を27年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、現在育成中である赤着色系品種を用いた分離集団の調査を中心に研究を遂行する。全面着色タイプである‘スタークリムソン’と緑色果皮を示す‘ラ・フランス’との正逆交雑によるF1集団について表現型の確認を行う予定である。調査する表現型については開花が見られた系統については果皮色を、未開花系統については葉色について調査を行い、加えて得られた表現型データをもとに集団内でバルクを組みRAPDやSSR等の分子生物学的手法により分子マーカーの作成を試みる。また、遺伝子構造解析についてはDNAブロット分析に用いる制限酵素を増やし、より詳細な解析を進めるとともに、非翻訳領域の解析も行う予定である。
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