昨年までの研究で,セイヨウナシ果実の赤着色形質にアントシアニン合成に関わるANS遺伝子およびUFGT遺伝子が強く関与し,それらの遺伝子の発現はmyb転写因子によって調節されることが示唆されている。それを踏まえて今年度は,赤着色に関わるアントシアニン生合成関連遺伝子ANS遺伝子、UFGT遺伝子および転写因子myb10についてDNAブロット分析によるゲノム構造解析を行い、枝変わり前後の着色メカニズムの違いがゲノム上に存在するかどうか検証した。昨年度予備試験的に行ったDNAブロット分析では一つの制限酵素を用いたが、今年度は3種類の制限酵素を使用し、セイヨウナシ緑色果皮品種およびその枝変わりと後代品種の計8品種、すなわち‘バートレット’の枝変わり変異体で全面着色タイプの‘ロージーレッドバートレット’、陽光面着色タイプの‘マックスレッドバートレット’、‘バートレット’の後代で陽光面着色タイプの‘カリフォルニア’、全面着色タイプの‘スタークリムソン’および原品種‘クラップス・フェボリット’、全面着色タイプの‘リーガルレッド・コミス’および原品種‘ドュワイネ・デュ・コミス’についてゲノム構造解析を行った。その結果、品種では多型が認められたが、これらの多型は原品種と枝変わり品種間や後代の品種間で同じであり着色形質との関連性は低いと推察された。すなわち、したがって、赤着色形質を制御する鍵因子は1塩基多型などのわずかな変異もしくは非転写領域の変異に起因するものである可能性が高く、それらを明らかにするためにはコード領域内外のシーケンス解析などによりさらに詳細な解析が必要であると考えられる。
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