研究実績の概要 |
前年度、新規の花弁表皮細胞関連転写因子の探索を行うため、野生型トレニアと花弁表皮細胞が変化しているTCP3-SRDX形質転換体トレニアの花弁のRNA由来のRNA-seqデータベースを使用し、植物の形態形成に主に関与するTCP転写因子遺伝子を抽出した。遺伝子発現レベルの倍率変化(fold change)が大きい、TfTCP7, TfTCP8およびTfTCP10について遺伝子を単離した。なお、RNA-seqデータベースにおいて、TfTCP8はTCP3-SRDX形質転換体においてfold changeが0.2倍と低く、TfTCP7およびTfTCP10はfold changeが3倍以上と高いことを示していた。単離した遺伝子の推定アミノ酸配列は、いずれもTCP転写因子の保存領域を有し、TfTCP7およびTfTCP8はClass I TCPファミリーに特有のアミノ酸配列をコードしていた。TfTCP10はClass II TCPファミリーのCINグループ特有のアミノ酸配列をコードしていた。先行する研究により、Class II TCPファミリーのCINグループは、葉や花弁の表皮細胞の形態を制御することが報告されている。 花弁表皮細胞の変化に、TfTCP7, TfTCP8およびTfTCP10が関与しているのか明らかにするため、野生型トレニアとTCP3-SRDX形質転換体トレニアの花弁表皮細胞が平面状とドーム状を示すステージの花弁を用いて遺伝子発現解析を行った。その結果、TfTCP7とTfTCP8は野生型トレニアと同等の発現量を示し、TfTCP10は野生型トレニアに比べTCP3-SRDX形質転換体において2倍以上の発現量を示した。TfTCP10が花弁表皮細胞の形態制御に関与していることが考えられることから、機能解析により明らかにする必要がある。
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