果樹では,育種による品種そのものの改良に加え,機能性をもつ台木品種を用いた接木苗により,樹高,樹勢,収穫時期,病虫害抵抗性等をコントロールすることができる.雌雄異株で大型のつる性木本植物であるキウイフルーツ等のマタタビ属植物は,育種過程および栽培過程に広大な面積と長い年月を必要とする.マタタビ属植物の台木は一般に共台であるため,樹勢コントロールや様々な土壌への適応性拡大のための台木品種の育成が望まれている. そこで本研究では,日本に自生するマタタビ属植物を用いて,1.未解明でかつ未活用の遺伝資源である低樹高開花系統の遺伝的背景を明らかにし,2.種内・種間交配により低樹高開花性の遺伝性の解明および低樹高開花品種群の育成を目指すとともに,3.機能性台木品種としての活用を図ることを目的としている. 日本に自生するマタタビ属植物には,30cm程度の挿木2年生苗で開花・結実する低樹高開花性をもつ系統が含まれていることを明らかにしてきた.2.について,種子親または花粉親が低樹高開花性品種・系統である種間・種内交配により,種子親または花粉親が低樹高開花性品種・系統であるA. arguta×A. arguta,A. arguta×A. kolomiktaおよびA. deliciosa×A. kolomiktaの実生を獲得することができた.3.では挿木苗を用いて低樹高開花性サルナシの生育パターンを明らかにするとともに,低樹高開花性サルナシを用いて接木を行い,接木苗の生育調査を行った.
|