本研究では、多年生植物であるリンドウの成長相転換期におけるゲンチオオリゴ糖の作用機構の解明を目指している。昨年度に解析した相転換関連遺伝子に加え、5遺伝子を新たに単離し、越冬芽で発現解析を行なった。また、ウイルスベクターを用いた解析から、一部遺伝子の発現調節により越冬芽の萌芽が誘導されたことから、休眠制御との関与が明らかとなった。本誘導時の代謝変化についてはメタボローム解析を行ない、影響される代謝経路について検証中である。さらに、越冬芽の茎頂部・茎部・葉部を用いて、GtFT1の発現とゲンチオビオース(Gen2)の蓄積を自発休眠初期から萌芽期まで経時的に調査したところ、両者の変動パターンには高い相関が観察された。特に葉部では特徴的な挙動が観察されたが、明確な作用領域は判明しなかったため、より詳細な解析を実施予定である。 Gen2代謝経路に関しては、酵母およびリンドウcDNA libraryを用いた解析から1遺伝子の選抜に成功した。本遺伝子についてピキア酵母を用いて融合タンパク質を合成し、機能解析を実施した。さらに、グルコースを起点とするゲンチオオリゴ糖合成経路を明らかにするため、標識グルコースを用いたトレーサー実験を実施した。分子量がシフトしたものに関して詳細な解析を行なったところ、UDPグルコースやグルコース6リン酸を含む糖関連代謝物が検出された。数種類の未知代謝物も検出されたが、MS/MS解析の結果から糖類が結合した代謝物であることが明らかとなった。これら代謝物の蓄積はGen2の合成と相関が見られたことから、ゲンチオオリゴ糖合成に関与する可能性が見出された。今後、本代謝経路を明らかにすることで、Gen2を介した相転換調節技術に繋がることが期待できる。
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