花弁の老化にエチレンが関与しない花(エチレン非依存性花き)では、有効な日持ち延長技術が開発されておらず、花弁老化の制御機構の解明が求められている。これまでに、エチレン非依存的老化を示すアサガオ「紫」において、花弁で発現する低分子RNAを網羅的に解析した結果、マイクロRNAの一種であるmicroRNA156(miR156)ホモログの蓄積量が、花弁の老化時に増加することを見出している。本研究では、miR156を介した花弁老化における遺伝子制御ネットワークを明らかにすることを目的とする。 アサガオ花弁の老化制御におけるmiR156の機能を解析するために、アサガオからmiR156の標的配列を含むSPL遺伝子ホモログ(InSPL1、InSPL2)を単離し、miR156による分解を受けないように標的配列を同義置換後、アサガオで過剰発現する形質転換体(rInSPL1とrInSPL2系統)を作出した。その結果、野生型とrInSPL1およびrInSPL2系統間で、老化様式に明確な違いは認められなかった。しかし、rInSPL1とrInSPL2形質転換当代では、予期せず、長日条件下で花成が誘導されるという現象が観察された。 本年度は、rInSPL1とrInSPL2のT1世代植物体において、日長による花成誘導反応を解析した。rInSPL1とrInSPL2系統の芽生えに対して、1回の短日処理を与えた結果、rInSPL1系統では効果が認められなかったが、rInSPL2系統ではterminal flower が形成された個体があった。これらの結果から、InSPL2がアサガオの日長による花成誘導に関与していることが示唆された。
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