研究課題/領域番号 |
25850029
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
高原 浩之 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (30397898)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 病原糸状菌 / エフェクター / 植物免疫 |
研究概要 |
植物病原糸状菌のアブラナ科植物炭疽病菌(以下、炭疽病菌)は、宿主細胞に侵入する際に低分子のペプチドタンパク質 (エフェクター分子)を分泌することで、植物が発動する免疫システムを回避すると考えられている。しかしながら、その実体はよくわかっていない。そこで、炭疽病菌のエフェクターを同定し、その機能解析を行うことで、植物の免疫応答を制御する分子機構(植物の免疫スイッチ)を明らかにすることを目的として研究を行っている。 本年度は、まず炭疽病菌エフェクターの同定と特徴づけを試みた。炭疽病菌由来の低分子の分泌性タンパク質をコードした遺伝子群(エフェクター候補遺伝子群)の中から、宿主の免疫応答を抑制する機能を持つものを、植物が病原菌エリシターによって誘導する過敏感細胞死の抑制効果を指標にして評価を行った。具体的には、エフェクター候補遺伝子を植物組織内で発現するように設計したバイナリ-ベクターに組み込み、アグロバクテリアの一過的発現系を利用して、モデル実験植物ベンサミアナタバコで発現を行った。その結果、エリシタータンパク質(NLP)によって誘導される細胞死を抑制する効果を示す複数の候補遺伝子を同定することに成功した。これらの遺伝子発現を調べてみると、炭疽病菌の感染過程で異なっていることから、炭疽病菌は宿主感染時にタイミングをずらして複数のエフェクター因子を分泌しているのではないかと考えられた。 一方で、この評価法を用いてエフェクター候補遺伝子群のスクリーニングを行っていたところ、予想に反して、エフェクター単独で植物の防御応答(細胞死)を誘導する効果をもつ新規因子を見出した。今のところ、炭疽病菌の宿主感染における本因子の機能は不明である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、初年度にエフェクターと相互作用する植物因子の探索を行う予定であった。ところが、エフェクターの機能評価を行っている過程で、予測する機能とは異なる新規の因子を見出したことから、そちらの評価について詳しく調べることにした。その結果、当初の計画とは異なる予定で研究を進めることになった。しかしながら、総合しておおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.植物の防御応答を抑制するエフェクター候補遺伝子 計画に沿って、本因子と相互作用する宿主植物因子の同定を試み、植物の免疫応答を調節する因子の実態解明を行う。同定した因子を欠損したシロイヌナズナ変異体を取得し、それらの植物免疫応答を調べる。 2.植物の防御応答を誘導するエリシター候補遺伝子 エリシターによる植物の防御応答誘導メカニズムの詳細を明らかにする。また、エリシターを過剰発現する炭疽病菌変異株を作出し、接種実験を行うことで、本因子の感染における役割を明らかにする。
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