植物病原糸状菌のアブラナ科植物炭疽病菌(以下、炭疽病菌)は、宿主細胞に侵入する際に低分子のペプチドタンパク質(エフェクター)を分泌するが、その機能はよくわかっていない。本研究課題では、炭疽病菌から分泌されるエフェクターが宿主への感染時に果たす役割について調べることで、植物の免疫応答をどのように制御しているのかを明らかにすることを目的とした。 前年度には、炭疽病菌エフェクターの機能評価アッセイ系を確立し、複数のエフェクター候補の中から、植物の免疫応答の一つである細胞死の誘導を抑制する因子を同定した。その一方で、細胞死を誘導する新規タンパク質因子も見出した。そこで本年度は、それら因子が植物細胞のどこで作用するのか、また植物因子の何と相互作用することで植物の免疫反応が制御されているのかを調べた。 その結果、炭疽病菌エフェクターには、植物細胞の外側(アポプラスト)で作用するものと、細胞内で作用するものがあることが明らかとなった。また、エフェクターと相互作用する候補因子を同定した。さらにエフェクターが過剰発現する炭疽病菌の作出に成功した。今後、それぞれの結果について、詳細な確認実験を行う必要がある。
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