研究課題/領域番号 |
25850034
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
松井 英譲 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (20598833)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物免疫 / リン酸化プロテオミクス / 細胞死 / 抵抗性 / リン酸化 |
研究概要 |
植物の免疫システムはBasal resistanceとR-gene mediated resistanceの大きく二つに分類される。これら二つの免疫システムは、共通した初期応答構成因子を利用して免疫システムを活性化させると考えられているが、その詳細については未だ不明な点が多い。 植物免疫システムの理解のため、申請者は最先端のプロテオミクス手法を用いて同定された、シロイヌナズナのMAMP応答性リン酸化タンパク質群のT-DNA挿入変異体を単離した。次に、それらをスクリーニングすることで、野生型と比べMAMP応答が変化するmark変異体 (ramから名称変更)を多数同定した。mark1(ram1)変異体はMAMP応答が野生株と比較して亢進するにもかかわらず、病原性細菌Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000 (PtoDC3000)に対して、より罹病性を示す。 本年度は、MARK1遺伝子の機能解析のため、次の試験を行った。1、mark1変異体の相補個体の作出し、表現型が回復することを確認した。2、MARK1が関与するシグナル伝達経路の解析を試みた。その結果、MARK1は病害抵抗性に重要なサリチル酸シグナルとは独立したシグナル経路を制御すること、また、MARK1が病原菌感染時に細胞死を抑制するために重要であることを明らかとした。3、MARK1のリン酸化の意義について解析するため、リン酸化状態、非リン酸化状態のMARK1を発現する形質転換体を作出した。予備的な知見として、MARK1のリン酸化は、病原菌感染時の免疫応答を抑制するために必要である可能性が示唆された。4、mark1遺伝子のホモログとの二重変異体、三重変異体を作出した。5、Yeast two hybrid法を用いて相互作用因子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予備的な知見ではあるが、非リン酸化型のMARK1を発現する形質転換体は、野生型と比較して、PtoDC3000の感染に対し、抵抗性を示した。一方、リン酸化型の形質転換体は、PtoDC3000の感染に対し、mark1変異体と同様に罹病性を示した。本結果は、MARK1のリン酸化制御が植物免疫応答の調節に重要であることを示すだけでなく、リン酸化プロテオミクス手法の有用性を示す結果であると考えている。 さらに、Yeast two hybrid法を用いた相互作用因子の解析の結果、MARK1タンパク質が寄与する分子メカニズムを推定するに至った。全く機能未知であったMARK1タンパク質の機能を推定するに至ったことから、MARK1の機能解析が当初の予定以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
mark1変異体は細胞死の負の制御因子として機能する。mark1変異体において認められる細胞死が抵抗性遺伝子(R protein)に起因するか検証するため、TIR-NBS-LRR typeのRタンパク質の制御に関わるeds1変異体およびpad4変異体との二重変異体を作出し、二重変異体の表現型について検討する。 これまでにMARK1タンパク質の相互作用因子が同定できたことから、それら相互作用因子の変異体を単離し、mark1変異体との二重変異体の作出を進める。また、mark1変異体と同様の表現型を示すか検討する。また、mark1とmark1ホモログとの二重変異体、三重変異体の表現型の解析を進める。 これまでに生じた問題点として、in vivoにおけるMARK1タンパク質の精製が極めて難しく、共免疫沈降試験などの当初予定していた解析に支障が出ている。今後、in vivoにおけるMARK1タンパク質の精製方法を引き続き検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
植物の育成に遅れが生じたため、本年度予定していた研究が出来なかった。そのため、次年度に残額を繰り越し、予定していた研究を推進する予定である。 形質転換植物を用いた病原菌に対する抵抗性検定を行う。また、タグを追加した形質転換個体からの共免疫沈降試験を行う。共免疫沈降試験により、相互作用因子が単離された場合、LC-MS/MSを用いた相互作用因子の同定を試みる。
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