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2013 年度 実施状況報告書

ブドウ根頭がんしゅ病新規拮抗細菌の環境中の動態と防除機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25850038
研究種目

若手研究(B)

研究機関岡山県農林水産総合センター(農業研究所)

研究代表者

川口 章  岡山県農林水産総合センター(農業研究所), その他部局等, 研究員 (80520486)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード根頭がんしゅ病 / 植物病害 / 生物防除 / 抗菌物質 / 抵抗性誘導 / 拮抗細菌
研究概要

次世代シーケンス解析により拮抗細菌非病原性Rhizobium vitis ARK-1株の全ゲノム解読を行った。その結果、全ゲノムサイズが5.5Mbpであり、ARK-1株と同属同種で病原性を有する根頭がんしゅ病菌のゲノムサイズ6.3Mbpよりも小さく、また病原性関連遺伝子群がコードされているプラスミドDNAを欠損していることが明らかになった。得られたARK-1株の全ゲノム情報と既に公開されている根頭がんしゅ病菌のゲノム情報とを比較することにより、ARK-1株に特異的な定量PCR用プライマーとプローブを設計したが、ARK-1株を含む近縁の遺伝系統の菌株も増幅することが明らかになった。そこで、ARK-1株の抗生物質含有寒天培地への継代培養により、抗生物質及び硫酸銅耐性能を有するARK-1変異株を作出した。3種類の異なる土性の土壌へ同耐性ARK-1変異株を接種したところ、3か月後には検出限界以下となったことから、ARK-1株は、単体での土壌における長期生存は不可能であると考えられた。
GFP導入ARK-1変異株および抗菌物質非産生変異株の作出については、既存のGFP導入方法でのARK-1株の形質転換に失敗しており、現在は遺伝子導入方法の改良を行っている。当研究所保有の根頭がんしゅ病菌の中に、ARK-1株の抗菌物質に対して非感受性の菌株が存在することを発見したので、トマトを用いた植物接種試験において防除効果を確認した結果、ARK-1株は抗菌物質非感受性の根頭がんしゅ病菌に対しても防除効果を示し、抗菌物質感受性の根頭がんしゅ病菌への防除効果とほぼ同等であった。以上のことから、抗菌物質以外の防除機構の存在が示唆された。病害抵抗性誘導については、ARK-1株接種によりトマトのPR-1遺伝子発現を確認したことから、抵抗性誘導が防除機構に関与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ARK-1株に特異的な定量PCR用プライマーとプローブを設計したが、ARK-1株だけを特異的に検出することはできなかった。しかしながら、抗生物質および硫酸銅耐性ARK-1変異株の作出に成功し、土壌中から安定的にARK-1株だけを検出することが可能になったことから、個体識別マーカーとしての利用が可能であるため、環境中での動態解明における進捗状況は順調である。GFP導入ARK-1株の作出は今後も継続する。
ARK-1株の抗菌物質非産生変異株の作出は現段階ではまだできていないが、ARK-1株の抗菌物質に対して非感受性の根頭がんしゅ病菌株を用いた植物接種試験において抗菌物質以外の防除機構の存在が示唆されたことから、別の方法ではあるが本来の目的を達成できたと考えられる。抗菌物質非産生変異株の作出については、方法の改良を行いながら今後も継続する。ブドウにおける病害抵抗性誘導については、ブドウのRNA抽出が困難であったため、トマトにおける病害抵抗性誘導を行い、抵抗性誘導の関与が示唆された。トマトでの試験を経験したことにより実験手法のノウハウが蓄積され、その後ブドウのRNA抽出にも成功したので、来年度以降はブドウにおける病害抵抗性誘導を集中的に行う予定である。
以上のことから、防除機構における抗菌物質と抵抗性誘導の役割の解明についての進捗状況はおおむね順調であると考えられる。

今後の研究の推進方策

1)定量PCRによる個体識別マーカーを利用したARK-1株の検出については中断し、抗生物質および硫酸銅耐性ARK-1変異株を用いた、植物の根や体内での動態解明を進める。
2)GFP導入ARK-1変異株および抗菌物質非産生変異株の作出については、現在は遺伝子導入方法の改良(接合伝達法における培地成分の改良)を行っている。
3)ARK-1株を接種することによる、ブドウにおける病害抵抗性誘導の有無とその程度を調査する。
4)ARK-1株の抗菌物質以外の防除機構の関与が示唆されたことから、ブドウの抵抗性誘導以外にも、根頭がんしゅ病菌の病原性発現を抑制するようなメカニズムがあるのではないかと作業仮説を立てた。ブドウでのRNAを用いたRT-qPCRができるようになり、抵抗性誘導を確認できた後、ARK-1株と根頭がんしゅ病菌を混合接種した場合における根頭がんしゅ病菌の病原性関連遺伝子群の発現量について調査する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Biological control of crown gall on grapevine and root colonization by nonpathogenic Rhizobium vitis strain ARK-12013

    • 著者名/発表者名
      Akira Kawaguchi
    • 雑誌名

      Microbes and Environments

      巻: 28 ページ: 306-311

    • DOI

      10.1264/jsme2.ME13014

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ブドウ根頭がんしゅ病の拮抗細菌および生物的防除法2013

    • 著者名/発表者名
      川口 章
    • 雑誌名

      JATAFFジャーナル

      巻: 1 ページ: 4-6

  • [雑誌論文] ブドウ根頭がんしゅ病の生物防除技術の新展開2013

    • 著者名/発表者名
      川口 章
    • 雑誌名

      果実日本

      巻: 68 ページ: 49-52

  • [学会発表] ブドウ根頭がんしゅ病の新しい生物防除技術の開発2013

    • 著者名/発表者名
      川口 章
    • 学会等名
      日本ブドウ・ワイン学会大会
    • 発表場所
      山梨大学
    • 年月日
      20131107-20131108
  • [学会発表] Biological control of crown gall on grape and root colonization by nonpathogenic Agrobacterium (Rhizobium) vitis strain ARK-12013

    • 著者名/発表者名
      Akira Kawaguchi
    • 学会等名
      APS-MSA Joint Meeting
    • 発表場所
      アメリカ合衆国テキサス州オースティン
    • 年月日
      20130810-20130814
  • [学会発表] )メタアナリシスを用いたブドウ根頭がんしゅ病の生物防除試験の評価2013

    • 著者名/発表者名
      川口 章
    • 学会等名
      日本土壌微生物学会
    • 発表場所
      東京農工大学
    • 年月日
      20130619-20130620

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公開日: 2015-05-28   更新日: 2023-03-24  

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