研究課題/領域番号 |
25850039
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
原 新太郎 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 特別教育研究教員 (10647019)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フィチン分解菌 / アーバスキュラー菌根菌 / 土壌微生物 / 有機態リン / AM菌 / phytase / Sphingomonas sp. / Caulobacter sp. |
研究概要 |
アーバスキュラー菌根(AM)菌菌糸周辺で植物残渣中の有機態リン(フィチン)を分解し、フィチン分解により生じた無機態リンをAM菌に供給するフィチン分解菌の分離を目的とした。土壌から直接フィチン分解菌を分離してもAM菌に無機態リンを供給しない可能性が考えられるため、AM菌がフィチン由来のリンを吸収する環境を整え、AM菌菌糸およびフィチン周辺からフィチン分解の分離を行った。すなわち、宿主植物としてミヤコグサ(Lotus japonicas)にAM菌を感染させ、ポット内にAM菌菌糸は通過するが植物根は通過しないナイロンメッシュで作成したメッシュバッグ内に微生物接種源となる畑土壌とフィチン含有アルギン酸ビーズを添加もしくは無添加で栽培試験を行った。アルギン酸ビーズ添加区と無添加区でミヤコグサのリン吸収の差があることを確認し、メッシュバッグ内から取り出したアルギン酸ビーズから計192株のフィチン分解菌を分離した。分離したフィチン分解菌のうち89株はSphingomonas属細菌で、16株はCaulobacter属細菌であった。分離源としたアルギン酸ビーズからDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子を対象とした変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法で菌相解析を行ったところ、主要なバンドはMassilia属細菌、Sphingomonas属細菌、Caulobacter属細菌の配列と一致した。また、同じDNA中のフィチン分解酵素(beta-propeller phytase, BPP)をクローンライブラリー法により解析した結果、ほとんどが分離したSphingomonas属細菌もしくはCaulobacter属細菌のBPPの配列と一致した。以上の結果から、AM菌がフィチン由来の無機態リンを吸収する状況でAM菌菌糸周辺に優占するフィチン分解菌の分離に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度は、AM菌が宿主植物に感染してメッシュバッグ内からフィチン由来のリンを吸収する栽培条件の確立を目的としていたが、栽培試験が順調に行われ、計画よりも早くAM菌菌糸周辺からのフィチン分解菌分離に着手できた。さらに、菌相解析により分離菌株がAM菌菌糸周辺で優占する種であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
分離したフィチン分解菌をメッシュバッグ内にフィチンを含む宿主植物-AM菌の栽培系に接種し、フィチン分解菌が宿主植物のリン吸収に与える影響を評価する。また、栽培後に残存したフィチンの量を定量し、フィチン分解量とAM菌を介して植物が吸収したリンの量と比較する。このとき、AM菌接種区と非接種区の比較を行うことにより、AM菌がフィチン分解菌の増殖およびフィチン分解活性に与える影響を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験が滞りなく進んだため、当初予定よりも試薬の使用量を削減できた。 実験の進捗が順調であるため、平成26年度には予定していなかった解析(定量PCRによる発現解析など)を行う。また、海外での学会発表に参加する。
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