研究課題/領域番号 |
25850041
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
上田 晃弘 広島大学, 生物圏科学研究科, 講師 (10578248)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 塩ストレス / ナトリウム / カリウム / シロイヌナズナ / イネ |
研究概要 |
植物の生産性は様々な環境要因によって制限される。乾燥地や塩類蓄積土壌で発生する塩ストレスは世界の農作物生産を制限する主要因となっており、その解決手法の一つとして耐塩性植物の分子育種が有望視されている。塩ストレス下で植物の生産性が低下する原因としては、植物が過剰量のナトリウム(Na)を体内に蓄積することが挙げられる。よって植物が土壌中のNaをどのように吸収するのか、を明らかにすることは植物の耐塩性機構を理解する上で重要である。本研究では、植物細胞においてNaやカリウム(K)、塩素(Cl)を細胞内に取り込むNa-K-Cl cotransporter(NKCC)に着目する。 まずシロイヌナズナやイネにおけるNKCC遺伝子の発現解析を行った。シロイヌナズナのNKCC遺伝子のプロモーターGUSラインを用いて組織特異的発現パターンを解析したところ、特に根の先端部の細胞分裂が活発な部位での強い発現が確認された。この発現誘導はK欠乏下で強く誘導されることから、K欠乏下ではNKCCによるK取り込みが根の先端部で活発になることが示唆された。さらにNKCC機能の欠損がもたらす影響を調べるために、シロイヌナズナの野生株とNKCC変異株を用いた比較トランスクリプトーム解析を行った。その結果、K輸送や細胞壁合成に関わるタンパク質をコードする遺伝子群の発現パターンに変動が見られた。さらにNa蓄積能に着目してイネ在来品種群選抜を行い、他品種と比較して、塩ストレス下でNaをあまり蓄積せず、K保持能が高い品種を選抜した。このような低Na蓄積型品種と一般的な高Na蓄積型品種におけるNKCC遺伝子の発現量の比較解析を行ったところ、イネゲノムが有する2つのNKCC遺伝子(OsNKCC1, OsNKCC2)のうち、OsNKCC1遺伝子の発現パターンが低Na蓄積型品種において塩ストレス誘導性であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NKCC遺伝子の発現について、モデル植物であるシロイヌナズナやイネにおいて興味深い知見を得ることができた。引き続き、実験計画を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
NKCCのイオン輸送活性を測定するために、シロイヌナズナNKCCの酵母変異体を用いたアッセイ系は構築済みである。さらに、イネの2つのNKCC遺伝子のクローニングを行い、酵母発現系を用いたイオン輸送活性の測定系を構築するとともに、NKCC輸送体内のイオン輸送に重要なアミノ酸残基の同定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子発現解析が予定していたものよりもスムーズに進行したため、消耗品費に余剰が生じた。 次年度にも発現解析等の分子生物学実験を予定しているため、余剰分は同実験の消耗品費として充てる予定である。
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