水稲とダイズを交互に作付けする田畑輪換圃場での土壌窒素肥沃度保全のため、堆肥や緑肥などの有機物の積極的な施用が求められている。圃場に施用された有機物由来窒素の一部は土壌に残存するため、その動態は複数年にわたり評価する必要があるが、田畑輪換体系ではそのような評価例はまだ無い。本研究では、田畑輪換体系における有機物由来窒素の動態を重窒素トレーサー法によりフィールドレベルで明らかにし、土性及び有機物のタイプがその動態に及ぼす影響を解析することを目的としている。 本試験では、水稲-ダイズを一年交互で繰り返す田畑輪換を想定し、異なる土壌タイプ(灰色低地土及びグライ土)及び輪換順序(水稲-ダイズ及びダイズ-水稲)において、1作目に重窒素標識した牛ふん堆肥、緑肥ヘアリーベッチ(HV)、化学肥料(硫安)を施用し、田畑輪換体系における有機質資材由来窒素の経年動態を追跡している。本年度は5作目となる栽培試験を継続する傍ら、15作後の土壌中における有機質資材由来窒素の残存形態及び作筒対窒素吸収量との関係について検討し、以下の結果を得た。 (1) イネ―ダイズ1年交互の田畑輪換体系の圃場に施用した有機質資材(ヘアリーベッチ及び堆肥)由来窒素は、5年間作物に継続的に利用され (各38~45%、10~12%)、5年後も土壌中に残存していた(各35%、60%)。(2) さらにダイズに比べイネでは、資材由来可給態窒素の吸収効率が高く、過去に施用した資材に由来する窒素の吸収量が多いため、イネ作付時には有機質資材の施用歴を考慮に入れた肥培管理が必要であると考えられた。
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