研究課題/領域番号 |
25850046
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
手塚 武揚 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (80646414)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 休眠 / 覚醒 / 発芽 / 希少放線菌 / 細胞応答 / 二成分制御系 / 胞子嚢 / マトリックス |
研究概要 |
本研究課題では希少放線菌Actinoplanes missouriensisが形成する胞子嚢と運動性胞子の解析により、細胞が休眠耐久状態から発芽に至る分子メカニズムの全容解明を最終目的としている。具体的には、胞子嚢特異的タンパク質AMIS4827の機能と性状の解析、および胞子嚢が破れて胞子が泳ぎ出す際に鍵となる制御タンパク質TcrAの機能解析の2点に焦点を絞り研究を進めている。AMIS4827については、大腸菌を宿主とした組換えタンパク質の生産について検討を行った。可溶性タンパク質として発現させることは現在のところ成功していないが、界面活性剤の添加による不溶性タンパク質の可溶化およびリフォールディングにより可溶性タンパク質を得ている。得られた可溶性タンパク質をゲル濾過クロマトグラフィーにより分離したところ、本タンパク質は分子量の非常に大きな複合体を形成している可能性が示唆された。これは、当初予想された真核生物におけるコラーゲンタンパク質との類似性を持つ可能性を支持するものである。また、AMIS4827遺伝子破壊株を作製し、その表現型を野生株と比較したが、胞子嚢の形態や強度、乾燥耐性などに顕著な変化は認められなかった。一方、TcrAについては大腸菌を宿主として発現、精製した組換えタンパク質を用いてゲルシフトアッセイを行い、べん毛遺伝子クラスター中の3つの転写単位の上流領域に特異的に結合することを見いだした。さらに、プローブDNAに対する変異導入実験からTcrAの結合配列を同定した。また、野生株とtcrA破壊株、hhkA破壊株からRNAを抽出してRNA-seq解析を行い、tcrAまたはhhkAの有無により転写量が変動する遺伝子を網羅的に同定した。その結果、両破壊株で変動が見られた遺伝子の多くが重複しており、TcrAおよびHhkAが一連の情報伝達経路を担う可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的および研究計画に沿って着実に研究を進めており、おおむね当初の実施計画通り研究が進展している。AMIS4827については当初計画していた可溶性タンパク質の発現条件を見いだすことはできていないが、不溶性タンパク質の可溶化により目的タンパク質を得ており、次年度はこのタンパク質を用いて種々の性状解析を行う予定である。TcrAについては、べん毛遺伝子の中にTcrAレギュロンを見いだした。また、RNA-seq解析により、TcrAの制御下にある遺伝子群を網羅的に同定した。今後は、これらの遺伝子の中から、胞子の休眠や覚醒に関わる遺伝子の同定を進める。
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今後の研究の推進方策 |
AMIS4827については可溶性タンパク質の発現条件のさらなる検討を行うとともに、翻訳後に切断されて活性型となる可能性を検証するため、A. missouriensis野生株から精製したタンパク質のN末端解析を行う。得られたタンパク質を用いて多量体構造や高次構造、保水性などの詳細な性状解析を行う。TcrAについては、ゲノム上でのTcrAの結合位置を網羅的に決定するため、抗TcrA抗体を作製してChIP-seq解析を行う。RNA-seq解析とChIP-seq解析の結果より、TcrAレギュロンを網羅的に決定し、胞子嚢の休眠の維持や運動性胞子の放出に関わると予想される遺伝子の機能解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
おおむね当初の計画通り助成金を使用した。今年度に生じた残額については次年度に研究計画に沿って使用する。 今年度と同様、研究計画通りに助成金を使用し研究を進める予定である。
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