1、磁鉄鉱形成に関わるシトクロムMamPの機能解析:昨年度までの研究成果により、MamPはマグネトソーム小胞内での磁鉄鉱結晶成長に必要なヘム蛋白質であること、その活性にはMamPへのヘムcの結合が必要であることが分かった。一方、嫌気呼吸経路である脱窒が、マグネトソームでの磁鉄鉱結晶の最適な合成に必要であることが知られている。免疫染色とイムノブロット解析結果から、MamPはマグネトソームではなく細胞質膜に局在していた。即ち、MamPと脱窒の電子伝達系が同所的に局在しており、両者の間での関連が予測された。そこで、Magnetospirillum magneticum AMB-1野生株、mamP欠損株、欠損株にMamPを発現させたレスキュー株において、脱窒経路の開始反応である硝酸塩還元活性を比較した。その結果、野生株では、磁鉄鉱結晶形成が行われる対数増殖期中期において、培地中の硝酸塩濃度が著しく減少するのに対し、mamP欠損株では、硝酸塩の消費速度が緩やかになった。一方、レスキュー株では硝酸塩消費が回復した。このことからMamPは、マグネトソームと細胞質膜(内膜)との間の電子運搬に関わるシトクロムであることが示唆され、MamPが磁鉄鉱合成のために鉄酸化により生じた電子を脱窒経路へと受け渡すという、磁鉄鉱形成の新しいモデルを提案した。
2、磁鉄鉱形成に関わる蛋白質の相互作用解析:磁鉄鉱結晶形成に関わる膜蛋白質Mms6とマグネトソーム小胞の表面を覆うMamA蛋白質が相互作用することを明らかにした。両蛋白質間の相互作用は、アフィニティークロマトグラフィー、免疫沈降、プルダウン、ゲルろ過によって確認した。相互作用の生理的機能は不明であるが、マグネトソーム内における蛋白質相互作用を示した初めての報告として論文投稿した。
|