研究課題/領域番号 |
25850059
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
林 毅 別府大学, 食物栄養科学部, 准教授 (40399811)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | Zymomonas mobilis / 呼吸鎖 / エタノール発酵 |
研究概要 |
本研究課題は、Zymomonas mobilis呼吸鎖の呼吸機能以外の生体内生理機能の解明を目的としている。Z. mobilis呼吸鎖の新規細胞内機能を解析する手始めに、Z. mobilisの呼吸鎖経路の完全解明を目指した。Z. mobilisは呼吸鎖において複合体IVを有さないことが明らかとなっているが、その代役となる遺伝子は存在すると予想されている。そこで今年度は先ず複合体IVの代役の遺伝子の同定し、Z. mobilisの呼吸鎖経路の完全解明を試みた。Charoensukらが予想している候補遺伝子(Charoensuk et al., J. Mol. Microbiol. Biotechnol., 2011)の破壊株を作成し、呼吸能を評価することで複合体IVの代役の遺伝子の同定を試みた。遺伝子破壊カセットとして、破壊遺伝子の中央に選択マーカーとしてクロラムフェニコール耐性遺伝子を挿入した遺伝子断片を構築し、候補遺伝子の遺伝子破壊を試みた。しかしながら予想していた以上に遺伝子破壊が成功せず、現在遺伝子破壊系の確立に戻って作業を進めている。 この研究進行の停滞を打開するために、別の切り口で呼吸鎖の新規生理機能の解析を進めた。すなわち、呼吸鎖の呼吸機能を止めた状態で、呼吸欠損株と野生株(変異していない親株)で異なる表現型を示す培養条件の探索を行った。その結果、塩(NaCl、KClなど)や糖(グルコース)を含む条件では、野生株よりも呼吸欠損株の方が強い増殖能を示すことが分かってきた。また同様に低温耐性(冷凍してどれだけ生存しているか)をも有していることが分かってきた。これらのことから、Z. mobilisの呼吸鎖は外的なストレスの防御にかかわっている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呼吸鎖の完全解明のための複合体IVの代役の遺伝子の同定に関しては、期待するような成果は得られなかった。一方で別の角度から解析した結果、呼吸鎖がこれまで明らかになっていなかった、ストレス耐性にかかわる可能性を示唆するデータが得られた。そのメカニズムを解明できれば、早い時期に論文としての発表が見込まれる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度明らかになってきた、呼吸鎖の外的なストレスの防御に関する研究を進める。これまでそれに関係する遺伝子がある程度絞られてきたため、その遺伝子とストレス耐性との相関を明確にすることで、呼吸鎖の新規機能を立証したい。一方で形態変化に関する試験に関しても進めたい。呼吸鎖欠損により細胞の形態が大きく変化することをこれまで明らかにしている。その原因について、形態形成にかかわる遺伝子を解析し、それと呼吸鎖につながる要因を追及したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
予算使用は当初予想した通りに進んだ。次年度使用額が生じた理由として、民間の財団より一部重複する研究テーマでの研究費が採択され、そちらを優先的に使用して研究を遂行したため、科研費の使用実績が少なくなった。 当初計画では予算の関係で見送っていた、呼吸鎖欠損株の糖代謝の解析をDNAマイクロアレイを用いて遺伝子レベルで網羅的に行う、もしくは次世代シーケンサーを用いたゲノムスケールでの変異箇所の同定による呼吸鎖欠損株の高エタノール生産メカニズムの解析を計画している。
|