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2013 年度 実施状況報告書

清酒酵母の高アルコール発酵性メカニズムの解析とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 25850065
研究種目

若手研究(B)

研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

渡辺 大輔  奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (30527148)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード出芽酵母 / 清酒酵母 / アルコール発酵 / グルコース脱抑制 / ADR1 / バイオエタノール / RIM15
研究概要

トランスクリプトーム解析に関しては、これまで発酵過程における解析を中心に行っていたが、本年度は新たに、アルコール発酵と密接な関係がある「定常期」と呼ばれる時期における解析を追加し、清酒酵母がグルコース脱抑制に関連する遺伝子の発現に欠損を示すことを見出した。この特徴は、発酵過程におけるデータとも共通しており、グルコース脱抑制とアルコール発酵調節のつながりが示唆された。実験室酵母において、グルコース脱抑制の誘導に必須な転写因子ADR1およびCAT8遺伝子の二重破壊が発酵速度を向上することが示されたことから、清酒酵母におけるグルコース脱抑制関連遺伝子の発現抑制が清酒酵母の高発酵性を引き起こす新たな要因であることを解明した。さらに、清酒酵母においてADR1遺伝子上の新規な機能欠失変異を同定することもできた。グルコース脱抑制はグルコース以外の炭素源の資化を引き起こすためのメカニズムであり、これを欠損することにより、清酒酵母は清酒もろみにおいてグルコースを専ら資化して効率的にアルコールを生み出す細胞へと適応したのではないかと推測される。
平成27年度に実施を予定していた清酒酵母以外の実用菌株への応用も前倒しで進めており、本年度は、清酒酵母の高発酵性原因変異として同定されたRIM15遺伝子の破壊が、ブラジルにおいてサトウキビ由来の糖蜜からバイオエタノールを生産するために用いられている実用菌株PE-2の発酵速度を向上し、発酵に要する時間を短縮できることを明らかにした。サトウキビ由来の糖蜜は、グルコース以外にフルクトースやスクロースといった炭素源を豊富に含み、発酵温度も清酒もろみと異なり高温(35℃~)である。このような条件においてもRIM15遺伝子の破壊が発酵性を改善できたことから、当メカニズムが出芽酵母のアルコール発酵の人為的改変に広く応用することが出来るのではないかと期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

トランスクリプトーム解析を通して、清酒酵母における新しい高発酵性メカニズムを発見することが出来たというのは当初想定していた以上の成果である。また、平成27年度に実施を予定していた清酒酵母以外の実用菌株への応用も前倒しで進め、バイオエタノール酵母への応用が可能であることを実証することが出来た。

今後の研究の推進方策

今後は、清酒酵母の高発酵性を引き起こす最も主要な原因であると考えられるRim15pの機能欠損が、酵母の代謝にどのような影響を及ぼすことによりアルコール発酵を促進するのかを解明するために、当初の計画通りメタボローム解析を実施する。また、清酒酵母・バイオエタノール酵母以外の実用酵母菌株についても、Rim15pの機能欠損が発酵性を改善できるのかどうかについても引き続き実証していく。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Accelerated alcoholic fermentation caused by defective gene expression related to glucose derepression in Saccharomyces cerevisiae2013

    • 著者名/発表者名
      D. Watanabe, N. Hashimoto, M. Mizuno, Y. Zhou, T. Akao, H. Shimoi
    • 雑誌名

      Biosci. Biotechnol. Biochem.

      巻: 77 ページ: 2255-2262

    • DOI

      10.1271/bbb.130519

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rim15p-mediated regulation of sucrose utilization during molasses fermentation using Saccharomyces cerevisiae strain PE-22013

    • 著者名/発表者名
      T. Inai, D. Watanabe, Y. Zhou, R. Fukada, T. Akao, J. Shima, H. Takagi, H. Shimoi
    • 雑誌名

      J. Biosci. Bioeng.

      巻: 116 ページ: 591-594

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2013.05.015.

    • 査読あり
  • [学会発表] なぜ清酒酵母はアルコール発酵力が高いのか?2014

    • 著者名/発表者名
      渡辺大輔
    • 学会等名
      第8回日本ゲノム微生物学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学(世田谷区)
    • 年月日
      20140307-20140309
    • 招待講演
  • [学会発表] 出芽酵母におけるグルコース脱抑制の機能欠損によるアルコール発酵の速度向上2013

    • 著者名/発表者名
      水野恵、渡辺大輔、橋本直哉、周延、赤尾健、下飯仁
    • 学会等名
      第65回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      広島国際会議場(広島市)
    • 年月日
      20130918-20130920
  • [学会発表] 出芽酵母PE-2株におけるRIM15遺伝子欠失による糖蜜発酵性の向上2013

    • 著者名/発表者名
      村上智子、井内智美、渡辺大輔、周延、深田理恵、赤尾健、島純、高木博史、下飯仁
    • 学会等名
      第65回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      広島国際会議場(広島市)
    • 年月日
      20130918-20130920

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公開日: 2015-05-28  

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