研究課題
清酒酵母において見出されたRIM15遺伝子の機能欠損による高発酵メカニズムが清酒酵母以外の実用酵母菌株にも適用可能であるかどうかについて、平成25年度にすでにバイオエタノール酵母PE-2株を用いたサトウキビ糖蜜の発酵試験により実証していたが、本年度はさらに、ビール醸造に用いられる下面発酵酵母W34/70株を用いて解析を行った。その結果、高濃度麦汁を用いたビール醸造試験において、RIM15遺伝子の破壊がアルコール発酵の促進につながることが明らかになった。一方、ワイン酵母では、RIM15遺伝子上の一塩基置換(C667T変異)により遺伝子産物のカルボキシル末端の大部分を欠失しているOC-2株以外では、RIM15遺伝子の破壊が発酵速度の上昇に繋がった。以上の結果から、清酒酵母以外の多くの実用酵母菌株において、RIM15遺伝子の機能欠損による発酵速度の上昇が可能であり、本法が汎用的な発酵改善育種技術の開発に資することが示された。なお、平成26年度に、RIM15の機能欠損はUDP-グルコース合成の低下を介してアルコール発酵を促進することを見出したが、中でも、UDP-グルコースを基質として合成される細胞壁構成因子1,3-β-グルカンの合成が最もクリティカルな役割を果たしていたことから、1,3-β-グルカン合成阻害剤の活用により、遺伝子組換えに依らないRIM15機能欠損酵母のスクリーニングが可能になることが示唆された。清酒酵母の検出については、清酒酵母に固有に存在するRIM15機能欠失変異(5055insA変異)を含むDNA領域をプライマーとして用いることで、HRM(高解像度融解曲線分析)法による簡易識別法を確立することができた。
すべて 2017 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)
Appl. Environ. Microbiol.
巻: 82 ページ: 340-351
10.1128/AEM.02977-15
生物工学会誌
巻: 93 ページ: 460-463